取調べの可視化と検察官手持ち証拠全面開示を求める会長声明

投稿日時 【 2010年 10月 26日 】 | カテゴリ: 会長声明一覧

 
 
 
取り調べの可視化と検察官手持ち証拠全面開示を求める会長声明
~厚生労働省元局長無罪事件を受けて~
 
 村木厚子さん(元厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)に対する虚偽公文書作成等の事件は,2010(平成22)年9月10日,大阪地方裁判所において無罪が言い渡され,この判決は検察官の控訴断念により確定した。検察官による強引な取り調べの結果採取された検察官面前調書の特信性が認められなかったことが,無罪の決め手となっている。
ところが,その後,あろうことか,同事件の捜査を担当した主任検事によって証拠のフロッピーディスクが改ざんされていた事実が明らかとなり,現職検事が逮捕,起訴されるという事態となった。
 これらの事実から,我々は,次の二つの問題点を再認識した。一つは,捜査機関は,可視化されない取調室という密室の中では,真実に目を背けてでも捜査機関側のストーリーに沿った強引な取り調べを行い,恣意的な調書を作成しがちであるという点,もう一つは,有罪獲得を目的とする捜査機関に,それとは反対の被告人に有利な証拠の存在を明らかにさせるというのは本質的に無理があるという点である。
 かような捜査機関の性質は,それ自体,冤罪を生みだす危険を孕んでいる。したがって,これらの問題から生ずる冤罪を防止するためには,取調べと証拠について,被告人側からの検証の目が向けられるシステムが構築されなければならず,それこそが,取り調べの可視化であり,検察官手持ち証拠の被告人側への全面開示である。
 今回明らかとなった検察官による強引な取り調べや証拠改ざんの事実が,当該主任検察官及び関係部署の資質の問題に矮小化されることがあってはならない。これらの事象は,取り調べを可視化せず,検察官の手持ち証拠を被告人側に全面開示することのない,現在の刑事訴訟システムに内在する構造的欠陥の発露であることを,我々は再認識すべきである。
 当会は,2009(平成2)年2月に取り調べの可視化を求める会長声明を発表するなど,これまでも刑事手続きの改善を求めてきたところであるが,今回の一連の事件を契機として,改めて,国に対し,全ての刑事事件について,捜査機関による取り調べの可視化と,検察官手持ち証拠の被告人側に対する全面開示を義務づける法律を,直ちに整備することを求めるものである。
 
2010(平成22)年10月26日
沖縄弁護士会
会 長  宮 國 英 男

 

 

 






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