消費者庁設立を求める会長声明

投稿日時 【 2008年 05月 22日 】 | カテゴリ: 会長声明一覧

消費者庁設立を求める会長声明

 

 福田康夫内閣総理大臣は,本年4月23日,政府が設置した消費者行政推進会議において,「消費者の視点から政策全般を監視し,『消費者を主役とする政府の舵取り役』となる消費者庁(仮称)を来年度から発足させる」との意向を明らかにし,消費者庁を消費者行政全般についての司令塔と位置づけ,消費者に身近な問題を取り扱う法律の消費者庁への移管や,地方の消費者行政の強化を打ち出し,そのために必要な予算・法律案の準備を進めるとした。

 当会は,政府が消費者保護に対してこのように積極的に取り組む姿勢を示している点を高く評価するものである。

ただ,次に述べる沖縄県内の状況等に鑑みれば,制度をより実効性あるものとするために,さらなる制度の充実発展を図る必要がある。

 当会は,当会消費者問題対策特別委員会を中心に,沖縄県県民生活センターに専門相談員を派遣し定期的な情報交換会を開催するなど行政機関と協力して消費者問題に取り組んできた。また,近年においては,県内で多重債務者が多いことから会員による多重債務無料法律相談制度を制度化したほか,大規模な消費者被害が発生した場合には会員で弁護団を結成し,大規模な消費者被害が生じる危険性があれば会長声明等で県民に注意を呼びかけるなど,消費者被害の救済にも積極的に取り組んできた。

 しかしながら,消費者問題は種類が極めて多岐にわたるだけでなく,繰り返し同種の事案による消費者被害が発生し,かつ,一旦消費者問題が発生すれば大規模な被害に繋がることが多く,当会や各行政機関の現在の活動だけでは,消費者被害の救済に一定の限界があるといわざるを得ない。

すなわち,消費者の権利を擁護し,消費者を被害から守るためには,行政機関において,被害者の相談窓口を充実させ,被害を早期に発見すると共に,その情報を一元的に集約した上で,事件の解決や被害の拡大防止のために迅速に対応できる体勢を確立することが不可欠である。

 ところが,現在のところ,消費者問題が多岐にわたるため,相談窓口が複数の行政機関に分散して設置されており,縦割り行政のため,情報の一元化や事件の解決や被害の拡大防止に向けて迅速に対応することが難しい状況にある。さらに,内閣府の調査によれば,全国の相談件数は増えているにもかかわらず,地方自治体の消費者行政予算は年々削減されており,十分な相談体勢を取れないなどの弊害も生じている。

 また,近年では,L&G事件やワールドオーシャンファーム事件等の投資詐欺事件や,振込詐欺の全国的な横行,多重債務者問題,一連の食品偽装事件など,一地域に止まらない広範な被害が発生する事件が増えている。わが沖縄県でも,上記L&G事件やワールドオーシャンファーム事件,沖縄県に本社を持つ八葉物流事件,県内の外国為替証拠金取引業者事件等において,県内外で多くの被害者を出している。さらに近年では県内でねずみ講まがいの大規模な投資詐欺的被害が多発し,会員により弁護団を結成したり,会長声明を出して県民に注意を呼びかけている状況にある。このような広範な被害が発生する事件では特に,各地方単位での消費者生活相談では問題解決が困難である。

こうした実情に鑑みれば,全国規模で一元的に被害情報を集約して,調査分析を行い,早期に事件を解決ないし防止することが必要であり,そのために十分な権限を有した消費者行政の体制を確立することが急務である。

従って,当会は,消費者の権利擁護の立場に立ち,消費者が主役の消費者行政を行う消費者庁を実現するため,次の制度の創設拡充を強く求める。

 

1 消費者の苦情相談が,消費者生活窓口における助言・あっせん等で適切に解決救済されるよう,地方自治体の相談窓口を充実・拡大させ,相談員らの雇用形態を抜本的に見直し,消費者問題に精通した相談員の養成を図るなど,そのために必要な人的・物的制度を構築し,かかる制度を維持するために必要な予算を国の責任で確保すること。

 

2 消費者庁は,地方の消費者相談窓口,消費者,事業者,公益通報者からの被害関連情報を一元的に集約し,調査・分析・公表する権限と原因究明機関を持つこと。

 

3 消費者庁は,消費者政策についての企画・立案を行い,消費者被害が多発する分野についての関連法の所管を消費者庁に移管し,必要があれば,関係省庁への勧告のみならず,許認可権限の事後的取消し等を含む事業者に対する直接の指揮監督権限を有すること。

 

4 消費者庁は,消費者被害救済に実績のある民間人を新組織人事に積極的に登用し,消費者団体に新組織に対する調査・勧告申立権限を付与するなど,新組織の運営に消費者の参加と監視が可能な制度を導入すること。

 

以上の通り,当会は,消費者被害防止と救済のために,消費者庁及び地方消費者行政が実効性のあるものとなることを強く求めるものである。

  平成20年5月22

                                                 沖縄弁護士会

                                                 会 長    三 宅 俊 司

 






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