沖縄弁護士会 環境宣言
投稿日時:【 2008年 05月 28日 】    

沖縄弁護士会 環境宣言


 20世紀から今世紀初頭にかけ、人類は、物質的な豊かさを追求し、大量生産・大量消費・大量廃棄の社会システムのもと、限りある資源を大量に使用してきた。しかし、その結果、深刻な公害被害が発生し、また、多くのかけがえのない自然環境が破壊された。さらに、地球温暖化、広範な化学物質汚染、生態系破壊など、現在、環境破壊は地球規模で進行しており、人類を含む地球上のあらゆる生命が生存基盤を脅かされるに至っている。


 今、人類の一人ひとりが現在の危機的な状況を自覚し、持続可能な循環型社会への転換を図るために、積極的に行動していくことが求められている。


 当会は、社会正義の実現・人権擁護を使命とする弁護士の団体として、環境問題が人権課題そのものであることに鑑み、深刻な公害被害を根絶するための活動や、良好な自然環境を保全・再生するための取り組み等を積極的に行うとともに、会の内外に向けても不断の努力によってこれら活動を発信し、その成果を地域社会に還元し続けねばならない。


 当会は、地球規模で進行する環境問題に対し、法律家団体として果たすべき役割を自覚し、環境の世紀たる21世紀において、以下のとおり行動することを宣言する。


 1 公害の根絶、豊かな環境の保全・再生、持続可能な循環型社会の実現に向けて、政府や地方公共団体等に環境政策に関する積極的な提言・提案活動を行うことにより、地球環境保全のために実効性ある法制度や行政の確立に努める。

 2 地球環境保全のため、国内外のNGO等との連携を強め、国際的な視野に立って幅広く活動する。

 3 弁護士会の活動や弁護士業務のあり方を真摯に見直し、地球環境への負荷を可能な限り低減するための行動計画を策定し実行する。


2008年(平成20年)5月28日

沖縄弁護士会定期総会

 


提案理由


第1 地球規模での環境問題

 20世紀から今世紀初頭にかけて、人類は、科学技術を飛躍的に発展させて物質的な豊かさを追求し、大量生産・大量消費・大量廃棄の社会システムのもと、限りある資源を大量に使用してきた。しかし、その結果、深刻な公害被害が発生し、また、多くのかけがえのない自然環境が破壊されてきた。

 さらに、大気中への温室効果ガスの大量排出による地球温暖化、化学物質等による広範な大気、海洋、土壌汚染、森林伐採や海洋の埋め立てによる生態系の破壊など、地球規模での気候変動、環境破壊が加速度的に進行している。

 この結果、近年、異常気象による都市部の災害や農林水産業への打撃による大規模な経済損失、生態系の破壊による絶滅種、絶滅危惧種の増加等、目に見える環境破壊が頻発するなど、人類を含む地球上のあらゆる生命の生存基盤が脅かされるに至っている。

 かかる認識のもと、1992年、ブラジルで開催された国連地球サミットにおいて採択されたリオ宣言では、地球環境問題が人類共通の課題として位置づけられ、持続可能な社会を構築する必要性が確認された。このリオ宣言を実行するための行動指針として、「アジェンダ21」が採択され、これを受けてその後、地球温暖化問題に対処するために、1997年12月開催の気候変動枠組条約第3回締約国京都会議において、京都議定書が採択され、二酸化炭素等排出削減の目標が掲げられた。そして、今日までに、いくつかのEU諸国等諸外国においては二酸化炭素排出削減目標達成に向けた努力が実効性をあげるなど、国際社会においては、地球環境保護のためのさまざまな取り組みが行われてきている。

 残念ながら、我が国においては、上記京都議定書の議長国として2008年から5年間の目標期間において温室効果ガスを1990年比6%削減するという目標を有しているにもかかわらず、既に現状では、日本国内の自主的な削減努力のみによる目標の達成が極めて困難な状況であることが明らかとなってきている。上記目標の実現達成が困難となっている現状は、残念ながら、これまでの国内の企業、家庭、政府公共団体等のあらゆる個人・組織による自覚的な二酸化炭素排出の削減努力や、環境保護に向けた実践が不徹底であったことを明白に示している。

 従って、今後、我が国が、地球温暖化問題において上記京都議定書での目標を達成することはもとより、国際社会で地球環境保護のために採られている様々な取り組みの流れに遅れを取らないためにも、国内のあらゆる個人・組織において、これまでの環境保護に対する態度の改善と、よりいっそうの自覚的な努力が不可欠であるといえる。

 当会は、これまで社会正義の実現・人権擁護を使命とする弁護士の団体として、良好な自然環境を保全・再生するための取り組みを行ってきた。そして、「環境の世紀」といわれる21世紀、地球環境保護のための国内的な実践と国際的な連携が一層要請される中、当会は、地球規模で進行する環境問題に対し、改めて法律家団体としての役割を自覚し、これまでの活動を継続し、会内外に向けての不断の活動と努力によってその成果を将来の弁護士会や地域社会に還元し、さらに発展させていかねばならない。


第2 「環境の世紀」の実現に向けた行動指針

 1 実効性ある法制度や行政の確立に向けて

 従来、当会及び日弁連、九弁連においては、政府や自治体等に対し環境保護の観点から提言を行うなどの環境問題等に取り組みが行われてきた。

 しかしながら、中城湾をはじめとする干潟や海洋の埋め立て、道路建設等公共事業による自然林の破壊、希少動植物種の棲息環境の悪化など、県内においても環境破壊はいまだ進行している。また、廃棄物処理の問題はますます深刻化しており、循環型社会への転換は遅々として進んでいない。

 さらに、環境アセスメント・環境行政への市民参加・情報公開など、環境保全・再生に向けた法制度・行政制度の整備は不十分であり、当事者適格等、門戸が狭く閉ざされた行政訴訟など、環境についての裁判制度も、十分に機能しているとはいえない状況にある。

 当会は、今後、これらの課題について、司法の立場から法制度や行政制度のあり方について積極的に提言・提案する取り組みを推進し、地球環境保護のための実効性ある法制度や行政の確立に向けた活動を強めていく必要がある。

 2 国際的視野に立った活動

 前記のとおり、地球温暖化や化学物質による各種汚染、生態系の破壊等、地球規模の公害や環境破壊に対し、国際的な取り組みが多様に展開されつつある。

 そして、これらの成果であるフロンガス等の規制に関するモントリオール議定書、二酸化炭素等の削減に関する京都議定書等、環境に関する国際的な法制度は、国内法制度や行政制度にも大きな影響力を持つに至っている。

 これらの取り組みの中で、非政府組織である環境NGOが国内外で活発に活動し、国際的会議の場で様々な運動を繰り広げ、重要な地位を占めつつある。

 弁護士会も非政府組織としてNGOの一翼を担っている立場から、これら国内外のNGOとの連携をも強め、国際的な視野に立って幅広く活動を行っていくことが重要である。

 3 環境に配慮した弁護士会の活動や弁護士業務の変革

 (1) ところで、当会の環境問題に対する取り組みとして、上記のような対外的な取り組みに加え、会内においても、環境負荷の低減に向けた自主的かつ積極的な取り組みをすることは必須である。

   しかしながら、現状においては、沖縄弁護士会における会員の認識が十分であるとはいえず、会内における環境保護に向けた自覚的な取り組みは積極的になされているとはいえない状況にある。

   そこで、環境問題に対する法律家団体としての役割を改めて自覚し、弁護士会及び各弁護士の活動や業務のあり方について真摯に見直し、環境負荷の低減に向けた取り組みを計画的、組織的に行っていく必要がある。

 (2) 温暖化防止に向けた行動指針

   現在、会内における環境負荷の低減に向けた取り組みは、ほとんどなされないないものの、環境負荷の低減に向けた計画的、組織的な取り組みとして、本環境宣言採択の提案にあわせて、下記のとおり具体的な行動に取り組む。

記 

  行動1 環境負荷低減に向けた積極的取り組み

 沖縄弁護士会は、年々拡大し続ける弁護士会活動につき、環境負荷低減の視点から今一度見直しを行い、当会活動に伴う紙や電気、ガス、水道等の資源の浪費防止、ゴミの削減、資源ゴミの分別リサイクル、グリーン購入、不必要な出張・会議等の削減や適切な通信・移動手段の選択による温室効果ガス排出の削減等、実践可能な環境負荷低減に向けた自主的かつ積極的な取り組みを速やかに開始する。

  行動2 環境マネジメントシステムの導入

 沖縄弁護士会は、行動1で指摘しているような全ての活動における環境影響の低減のために、「ISO14001」若しくは「KES環境マネジメントスタンダード」「エコアクション21」等の環境マネジメントシステムの導入を検討する。

  行動3 環境負担軽減に向けた会内への啓発活動

  沖縄弁護士会は、環境負荷を低減することが会の重要な課題であることを認識し、執行部及び公害対策及び環境保全特別委員会を中心として会内における環境負荷低減に向けた積極的活動を推進するための部署を設け、あわせて弁護士会および各弁護士に向けた研修、情報提供等の啓発活動を実施する。

行動4 環境問題についての市民に対する啓発活動

  沖縄弁護士会は、弁護士活動において得られた環境問題や環境負荷低減に向けた取り組みについての知見を積極的に市民に提供し、環境問題についての地域社会全体の意識を高める為の啓発活動等を行う。

 (3) 環境負荷低減に向けた取り組み及び啓発活動

 当会が即時にでも実行することが可能な具体的施策として、次のような計画的・組織的取り組みを行い、さらに会内においてもこれらの啓発活動を行うことがあげられる。

   すなわち、沖縄弁護士会の活動は年々拡大し続けており、これに伴い、事務局の事務量の負担も増えるばかりとなっている。今一度、自らの組織、活動のあり方について環境負荷低減の視点からも見直すべき時期にきているといわざるをえない。

   例えば、現在、当会でもっとも環境に負荷を与える要因と考えられるのが大量に使用されているコピー・FAX用紙の量である。一般社会においては、ペーパ一レス化が確実に進行している。当会としても、紙の使用量削減に向けた一連の施策(例えば、電子メールやペーパーレスFAXの活用等)を、計画的・組織的に実施する必要がある。かかる紙の削減策は、業務のIT化の推進と相俟って事務を合理化するものであり、当会職員の事務量をも軽減し、かたや経費を節減する副次的な効果を持つものでもある。

   また、環境負荷低減に向けた取り組みとして、紙の使用削減のみならず、電気、ガス、水道その他の環境負荷の要因をも洗い出して必要な施策を講ずることも重要である。すなわち、新会館建設等においても、節電機能、節水機能の付いた設備の導入やインターネット環境の充実、グリーン購入等、設備(ハード面)による環境対策はもとより、会議中の弁当やペットボトル飲料配布の廃止や節減によるゴミの削減、資源ゴミの分別廃棄やリサイクル回収業者との提携によるゴミのリサイクル等、リデュース(Reduce:減らす)、リユース(Reuse:再利用)、リサイクル(Recycle:循環)という3Rシステム等、当事者の考え方やルール作り(ソフト面)での環境対策もあわせて計画的・組織的に推進すべきである。

   さらに、これら当会における環境対策の成果やノウハウ、情報は、当会各会員に対しても、具体的な環境対策の方策についての研修や情報提供、注意喚起等の各種手段により、時宜に即して定期的に周知し、沖縄弁護士会のみならず当会各会員及びその事務所を巻き込む形で環境負荷低減に向けた積極的な取り組みが実現できることが望ましい。

 (4) 環境マネジメントシステムについて

   このような環境負荷軽減を実効あるものとするために、適切な時期に環境マネジメントを導入することを検討するべきである。

   周知のとおり、産業界では、自らが環境に与えている負荷を低減するために、企業の自主的な取り組みの枠組みをつくる方法として、環境管理に関する国際標準規格ISO14001が生まれた。これは、環境負荷の低減を目的として、計画をたて(Plan)、実施し(Do)、結果を検証し(Check)、再び計画を立て直す(Act)といった一連のプロセス、すなわちPDCAサイクルを実施する国際標準規格のことである。

   また、ISO14001ほど認証取得に費用や手間がかからず、より簡易で安価な、中小の組織向けの環境マネジメントシステムとして、「KES環境マネジメントスタンダード」や「エコアクション21」などが同じく存在しており、これらはISO14001をモデルに作り上げられたシステムであり、それぞれの規格や取り組みの方法において相違があるものの、「PDCAサイクル」と呼ばれる基本的な構造を採用している点は全て共通である。

   現在では、さまざまな活動分野において環境に配慮することが社会的責務であるとの認識が広まり、企業のみならず地方公共団体・学校・研修所等の公益的な団体も数多く上記の環境マネジメントシステムを導入するようになっており、環境マネジメントシステムは、産業界のみならず全ての組織においてのグローバルスタンダードとして認知されるようになっている。

   このような環境マネジメントシステムの導入は容易なことではないが、環境に配慮した組織や業務のあり方についての検討を、今後、計画的、実効的に行っていき、まずはより簡易な環境マネジメントシステムであるKESやエコアクション21等の環境マネジメントシステムを適切な時期に導入することを目標に掲げ、会としてその導入を検討するのが相当である。 

 (5) 環境問題についての市民に対する啓発活動と相互交流

当会は、社会正義の実現・人権擁護を使命とする弁護士の団体として、環境問題に対する取り組みが「環境の世紀」たる21世紀の現代社会における社会的命題であることを認識し、当会の活動において得られた環境問題や環境負荷低減に向けた取り組みについての知見を、積極的に市民に提供し、本環境宣言に込められた趣旨を市民とともに共有することが必要である。このため、シンポジウムや意見交換会など、様々な形で環境問題に対する市民に対する啓発活動を行うとともに、会外からも環境問題・環境保護制度についての専門家を呼んで勉強会を開催するなど、情報交換をして当会各会員自身の知見を高める為の努力をすることが重要である。

 (6) 以上のとおり、当会内において、地球環境保護に向けた具体的施策を推進するための各会員のコンセンサスを得るとともに、地球環境保護という沖縄弁護士会を超えたより大きな現代社会的命題についての意識を共有して、会員各人の自主的な取り組みを推進する為にも、その根拠指針となる環境宣言の採択が是非とも必要である。


第3 結論

 以上のとおり、当会は、環境の世紀たる21世紀にふさわしい社会的組織として、当会並びに弁護士の使命を自覚し、環境問題に対する我々の行動の指針として環境宣言を設け、内外に宣言することは、重要な意義がある。よって、本宣言を提案するものである。

 

 
印刷用ページ