違法な一時保護委託についての会長声明
投稿日時:【 2007年 03月 14日 】    

 違法な一時保護委託についての会長声明



 福岡高等裁判所那覇支部は,2007(平成19)年1月25日,放火犯であるとして補導された沖縄県内の当時13歳の少年を警察署長が身体拘束した行為につき,これが違法である旨判断し,同年2月9日,同判決が確定した。


 同事件は,上記少年が児童相談所長からの一時保護委託に基づき警察により身体拘束されている間に虚偽の自白調書が作成されたが,家庭裁判所の審判において触法事実なしの不処分決定がされた事案について,少年が沖縄県に対し,違法な身体拘束等を理由として,慰謝料の請求をしていたというものである。


 同判決は,まず,児童相談所長の行う一時保護は,児童の健全な育成を目的とし,少年の犯罪捜査・触法調査を目的とするものではないから,これを児童相談所の一時保護所で行うのを原則とし,警察署長への一時保護委託は,それ以外他に方法がない場合に限定されると判示した。その上で,同事件においては,夜間でなく,少年が反抗の姿勢を見せておらず,一時保護所には定員の余裕があり,したがって受け入れが可能であったにもかかわらず,電話で児童通告を受けた児童相談所は,一時保護所での受け入れについて十分な検討を経ることなく,警察における調査継続の必要性に配慮して少年の一時保護につきこれを警察署長に委託したもので,当該委託行為は児童相談所長の裁量を逸脱した無効な処分であり,かような委託に基づきなされた警察署長による同少年の身体拘束は違法である旨明示し,結論として,少年の請求を棄却した原審を取り消し,慰謝料請求を認容した。


 上記判示のとおり,一時保護は,触法少年などを緊急に保護し,児童の処遇方針を決定するために行動を観察し,短期の指導を行うための行政処分であり,児童の健全な育成を目的とするものであって,少年の犯罪捜査・触法調査を目的とするものではない。ところが,現実には,触法の疑いのある少年について,警察は児童相談所に電話さえすればその後24時間は身体拘束が可能で,その間は自由に調査ができると考え,児童相談所もこれを受け入れて安易に一時保護を警察に委託するという違法な運用が,一部で常態化している。このことは,沖縄県内の全ての児童相談所において,平成15年度から平成17年度までの間,触法少年として警察署から通告があった事案については,全件において警察署長に一時保護の委託がされていた旨上記判決で認定されていることからも,十分に窺われるところである。


 そして,一時保護制度がかように調査目的で濫用された結果として,実際に本件少年は,密室での取調により虚偽の自白をさせられ,家庭裁判所に送致されたのであり,その弊害は計り知れない。


 かような運用は,沖縄県内に留まらず全国的になされている可能性があるが,上記判決は,一時保護制度の趣旨に言及したうえで,児童相談所長が調査の目的で警察署長に対し一時保護の委託をする行為が裁量の逸脱に当たり,当該委託に基づきなされた身体拘束は違法である旨断じた画期的な判決であり,全国の児童相談所関係者及び少年警察関係者は,同判決の判示したところに則り,一時保護委託の運用につき,今一度これを見直す必要があるものと思料する。


 上記判決を受け,当会は,少年の一時保護が本来の趣旨,すなわち児童の健全な育成という目的にのみ利用され,触法に関する調査の目的で児童相談所長から警察署長へ一時保護の委託がされるという違法な運用が今後一切行われないよう,関係各機関に対し強く要請するとともに,あくまでも児童福祉の観点に立ち,今後より一層,少年警察活動の適正化に向けて最善を尽くす所存である。


 




2007(平成19)年3月14日




 沖


        会 長  大  城     浩


 

 
印刷用ページ