金利引き下げ決議
投稿日時:【 2006年 05月 31日 】    

 出資法上限金利を利息制限法の制限金利まで引き下げること等を求める決議


第1 決議の趣旨


 当会は,平成19年1月を目途に予定されている「貸金業の規制等に関する法律」(以下,「貸金業規制法」という。)及び「出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律」(以下,「出資法」という。)」の上限金利の見直しに向け,国に対し,下記の点を強く求める。

                記

1 出資法第5条第2項の上限金利を,利息制限法第1条の制限金利まで引き下げること

2 貸金業規制法第43条(以下,「みなし弁済規定」という。)を廃止すること

3 出資法の日賦貸金業,電話担保金融及び質屋に対する特例措置の撤廃を行うこと


第2 決議の理由

 1 貸金業法及び出資法の見直し

   平成19年1月を目途に貸金業法及び出資法の上限金利,貸金業制度の見直しが予定され,本年中に法案が国会に上程される見通しである。

 2 深刻な多重債務問題

   長引く不況の影響を受けて多重債務問題は益々深刻化し,過去5年間の個人破産申立件数(累計)は約100万件に上り、潜在的な破産予備軍も150万~200万人いると言われている。また,経済的理由による自殺者は,平成16年には8000人に達し,交通事故の死者を上回っている。さらに,多重債務問題が各種犯罪,離婚,児童虐待の原因になっていることも少なくなく,多重債務問題は社会不安の一要因となっている。

   特に,沖縄県においては,人口一人あたりの貸金業者数が全国1位であり,また日賦貸金業者数はその登録数自体が全国1位である。同業者の中には,貸金業法の定める要件をみたさない貸付を行っている業者が多く,沖縄県内において多重債務問題は深刻な問題となっている。当会においても,従前から県内マスコミに対し日賦貸金業者の広告規制を求めるなど多重債務問題に取り組んでいるところである。

 3 多重債務の原因となる金利の二重構造

   こうした現実に存在する多重債務問題について,日本弁護士連合会は,これまで繰り返し,本決議の趣旨と同様,出資法の上限金利の引き下げ,貸金業法のみなし弁済規定の廃止等をもとめてきたが,さらに多重債務問題が深刻化している今こそ,上記現実に目を向け多重債務問題の原因を分析し,その解決のために根本的な方策が取るべきである。

   そこで,多重債務問題の原因につき考えてみると,直接的な原因が現実的な返済能力を超えたクレジット・サラ金・商工ローン業者等の高金利にあることは明らかである。そして,より根本的には、我が国の金利規制が,かかる高金利の横行を許す構造となっていることにこそ問題の確信があると言わなければならない。

   すなわち,我が国の現在の金利規制は,一般に,利息制限法(貸付額により年15~20%)と出資法第5条(年29.2%)の二重構造になっており,さらに,日賦貸金業者,電話担保金融及び質屋に対しては,その刑罰対象利率につき例外措置(日賦貸金業者・電話担保金融につき年54.75%(出資法附則第8条,14条),質屋営業につき年109.5%(質屋営業法第36条))が設けられている。

   そして,利息制限法と出資法の間の利率による金利は,民事上は無効とされるが刑事罰の対象とはならない「グレーゾーン金利」とされている。

   しかも、グレーゾーン金利は原則無効であるにもかかわらず,貸金業規制法第43条の「みなし弁済規定」が一定の条件を満たせばその取得を認めているため,多くの貸金業者は,利息制限法を無視し,このグレーゾーンの範囲内で貸し付けを行ってきた。ここに,多数の多重債務者が生み出され続けている構造的問題の本質があり,まず,グレーゾーン金利をなくす必要がある。

 4 出資法金利の利息制限法の制限金利までの引き下げの必要性

   そして,公定歩合が平成13年9月19日以来0.10%を維持していること,多くの国内大手銀行の普通預金金利が年0.001%と極めて低く設定されていること等に照らせば,利息制限法の制限金利でさえも十分な高利であり,出資法第5条2項所定の年29.2%という金利は,もはや現実からかけ離れた論外な高金利である。

   こうした経済の実態から大きく乖離した極めて高い利息で借り入れを行った場合に,通常の市民生活や中小企業の経営努力では,もはやその利息すら返済していくことが困難となることは容易に想像できる。

   その一方,サラ金業者等は,極めて低い調達金利で資金を集め,年25%から29.2%もの超高金利で貸付け,巨額の利益を上げ続けている。サラ金業者等は,貸せば貸すほど利益が上がる構造となっており,利用者の支払能力を無視した過剰融資や返済困難に陥った債務者に対する苛酷な督促・取立の根源的な要因となっている。

   そうすると,今,多重債務問題の抜本的解決のためになすべきことは,出資法第5条2項の上限金利を少なくとも利息制限法1条の制限金利まで引き下げ,もってグレーゾーンを廃止することである。

   そして,グレーゾーンがなくなれば「みなし弁済規定」は無意味な規定となるので,同規定も同時に撤廃されなければならない。

 5 みなし弁済規定に関する最高裁判決とその廃止の必要性

   最高裁判所は,貸金業規制法第43条のみなし弁済規定について,本年1月13日,19日及び24日,これを厳格解釈し,その適用を否定する画期的な判断を下した。最高裁は,平成16年2月,平成17年12月にも同趣旨の判断を行っており,これら一連の判決により,利息制限法違反の高金利を容認しないという司法の考え方が示されたと理解できる。右最高裁による一連の判断に照らしても,みなし弁済規定が撤廃されるべきことは明らかである。

 6 日賦貸金業者等に対する特例措置の撤廃の必要性 

   日賦貸金業者,電話担保金融及び質屋に対する特例は,集金・担保物保管コストがかかること等を理由としているが,現在では,立法時とは時代背景が全く異なり,他の貸金業者と比べてコストに差があるとは認めがたく,現在も特例が認められる根拠は乏しい。

   むしろ,日賦貸金業者による過酷な取立が問題になっており,平成6年3月15日に,日本弁護士連合会が当時の大蔵大臣及び警察庁長官に対し,日賦貸金業者の特例金利の廃止と取締り強化を求める要望書を提出するなどしてきたが,同問題は,日賦貸金業者数が全国一位の沖縄県においては,なお一層深刻な問題となっている。

   かかる実体に鑑みれば,日賦貸金業、電話担保金融及び質屋に対する特例措置を設ける必要性はなく,撤廃されるべきである。

 7 上限金利引き下げ実現本部 

   出資法及び貸金業規制法の見直しについて,近時,貸金業者を中心に,みなし弁済規定,利息制限法の制限金利を超え出資法の上限金利を超えない範囲で刑事罰の対象にならないいわゆる「グレーゾーン」金利の廃止の名の下に,利息制限法の制限金利の引き上げ又は廃止を目指す動きがみられる。

   しかし,上記のような多重債務問題の深刻化を顧みず,グレーゾーン金利廃止の名の下に,利息制限法の制限金利の引き上げ又は廃止を目指す議論は論外なものというほかない。

   そこで,当会は,本年1月に,日本弁護士連合会に対し,「上限金利引き下げ実現本部」を設置するよう求めて,日本弁護士連合会においては,平成18年2月16日,上限金利引き下げ実現本部が設置されており,当会は,同連合会と共に利息制限法の厳守や多重債務問題の対策に全力を傾注してきた。

     そして,本年5月26日の日本弁護士連合会定期総会において,本決議と同様に出資法上限金利を利息制限法の制限金利まで引き下げること,みなし弁済規定の廃止及び日賦貸金業者等に対する特例措置の撤廃を求める決議がなされた。

 8 結論

   上記の状況をふまえ、深刻化する多重債務問題の解決のため,当会は,上記決議の趣旨記載の決議を行うものである。


               2006年(平成18年)5月31日

                                   沖縄弁護士会定期総会

 

 
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