重要土地等調査規制法案に反対する会長声明
投稿日時:【 2021年 05月 21日 】    

重要土地等調査規制法案に反対する会長声明

 
 政府は「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び規制等に関する法律案」(重要土地等調査規制法案)を国会に提出し、すでに衆議院でその審議が始まっている。
 本法案は、「重要施設」や「国境離島等」の機能を阻害する行為を防止するとの目的で、内閣総理大臣がこれらの存する地域で「注視区域」や「特別注視区域」を指定して区域内の土地や建物(土地等)の利用状況を調査し、重要施設等の機能を阻害するおそれがあると認めたときには、その利用者に対して利用中止等の勧告や命令をなしたり、土地等の買い取りができる、などとするものである。
 しかし、本法案は人権侵害のおそれが極めて高く、以下のとおり多くの問題があることを指摘せざるをえない。
 本法案は、対象となる重要施設を自衛隊や米軍、海上保安庁のすべての施設のほか政令で定める生活関連施設とし、加えて国境離島等も島そのものを対象としており、調査規制の対象となる「注視区域」を無限定に拡大しうる内容となっている。
 そして、このきわめて広汎な対象地から指定される「注視区域」で行うとされる調査内容も何ら限定がないまま政令に委ねられており、調査対象となる者も土地等の「利用者その他の関係者」という広汎な範囲に及ぶ。その結果、立法目的が広範かつ曖昧であることもあいまって、土地等の利用者や関係者の行動や交際範囲、思想信条など際限なく調査が拡大されるおそれがある。これらの調査では、関係行政機関や地方公共団体だけでなく、利用者や関係者自身にも情報提供義務が課されており、たとえ自身への調査であっても刑事罰をもって報告が強制される。これでは対象となった土地等の利用者やその関係者のプライバシー権や思想・良心の自由が侵害されるおそれが大きい。また、内閣総理大臣が重要施設や国境離島等の「機能を阻害する」おそれがあると認めれば、利用者に対して利用中止等の勧告や命令をなしうるとされており、この命令にも罰則が用意されている。
しかし、その防止が立法目的とされた「機能を阻害する」行為は限定されておらず、広範かつ曖昧である。それゆえ、内閣総理大臣が曖昧な要件の下で罰則付き命令を広く行うことが可能となり、その結果、プライバシー権や思想・良心の自由、財産権等のほか、居住移転の自由や表現の自由、取材の自由等、多くの基本的人権が侵害されるおそれが大きいといわざるをえない。
 そもそも本法案は、自衛隊基地周辺の外国資本による土地取得を問題視し、その規制を求める声から立案されたものではあるが、これまでかかる土地取得などで自衛隊の運用等が阻害された事実がないことは政府も認めていることであり、立法の必要性に疑問がある。
 沖縄県は、県土そのものが国境離島であるばかりか多くの米軍基地を抱えている。このため、沖縄県民のだれもが本法案による調査規制対象となってもおかしくなく、広範かつ曖昧な目的のために県民が知らないうちに監視下におかれるおそれもありうるのが本法案の基本的枠組みといわざるをえない。
 当会は、重要土地等調査規制法案は、その制定の必要性が裏付けられていない一方で、指定された区域の土地等利用者や関係者のプライバシーや思想・良心の自由、その他多くの基本的人権を侵害するおそれが極めて大きいことから同法案に反対するものであり、今国会にて廃案とすることを求める。
 
                                      2021(令和3)年5月21日
                                                沖縄弁護士会
           会 長  畑   知  成

 

 
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