少年法の一部を改正する法律案に反対する会長声明
投稿日時:【 2021年 03月 23日 】    

 

少年法の一部を改正する法律案に反対する会長声明

 

 

少年法の適用年齢を18歳未満とすることの是非等に関し、法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会は、2020(令和2)年9月9日、取りまとめ(答申案)を採択し、法制審議会は同年10月29日、法務大臣に答申をした。この答申を受け政府は2021(令和3)年2月19日、通常国会に少年法の一部を改正する法律案(以下、「改正案」という。)を提出した。

改正案が18歳及び19歳の者を「類型的に未だ十分に成熟しておらず、成長発達途上にあって可塑性を有する存在である」と捉え少年法の適用対象とし、家庭裁判所への全件送致主義を維持したことは、当会が過去複数回にわたり会長声明で訴えてきた内容と合致しており評価できる。

しかし改正案は「18歳以上の少年」を「特定少年」と位置づけ、18歳未満の者と異なる扱いを定めており、少年法の健全育成の理念を大きく後退させる内容となっている。当会は以下のとおり改正案に対し強く反対する。

 

 

1 まず改正案は、改正理由として「成年年齢の引下げ等の社会情勢の変化」を挙げるが、各法律の適用年齢はその法律の目的ごとに定められるべきであり、選挙権や民法上の成年年齢が引下げられたとしても、それに少年法を連動させる必要はない。また「少年による犯罪の実情」も改正理由として挙げるが、近年は18歳及び19歳の少年によるものも含めて少年による犯罪は減少しており、現行少年法は有効に機能していると言え、改正の立法事実は存在しない。改正理由にはいずれも合理的根拠はない。

 

2 改正案は「特定少年」について、原則逆送の対象とする事件を、「短期1年以上」の罪の事件にまで拡大している。

しかしこれでは犯情の幅が広い犯罪類型である強盗罪なども一律原則逆送事件に含まれることになり、未だ発達段階にあり可塑性のある18歳及び19歳の者に対し少年法によるきめ細やかな個別的処遇を受ける機会を失わせるとともに、細やかな教育的手当がされず、立ち直りや再犯防止の点からも逆効果となる可能性がある。

 

3 改正案は、「特定少年」の保護処分について「犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲において」行うこととし、「ぐ犯」は対象から除外する。

家庭裁判所の処分は、犯情に応じた処遇ではなく、要保護性に応じた処遇がなされるべきであるところ、改正案は要保護性に応じた少年への適切な処遇選択を妨げることになりかねない。また罪を犯したとは言えなくとも、保護処分の対象となることで立ち直りの機会を得ている18歳及び19歳の者も少なくないところ、「ぐ犯」を対象外とすることは、これらの立ち直りの機会を失わせることとなる。

 

4 改正案は逆送後の「特定少年」に係る事件について、不定期刑や資格制限排除の適用を除外している。

現行少年法の不定期刑や資格制限排除規定は、少年が可塑性に富み、教育による改善更生が期待できることから処遇に弾力性を持たせることと、広く更生の機会を与え社会復帰を容易にすることにある。18歳及び19歳の者についても20歳以上とは異なり、類型的に可塑性に富む存在と位置付ける以上、不定期刑や資格制限排除を適用すべきである。

 

5 改正案は「特定少年」のときに犯した罪により公判請求された場合の推知報道を解禁している。

しかし近年のインターネットの発達により、いったん推知報道がなされた場合、その内容がインターネット上で容易に拡散され、不特定多数の者が検索しうる状態が半永久的に続くことになり、本人の更生意欲や更生の機会を失わせる可能性がある。

 

 

以上のとおり、改正案は少年に対する健全育成の理念を大きく後退させる内容であり、当会は改正案に対して強く反対する。

 

    2021(令和3)年3月23日   

 

    沖縄弁護士会           

       

    会 長  村  上  尚  子

 

 

 
印刷用ページ