沖縄弁護士会男女共同参画基本計画
投稿日時:【 2021年 03月 17日 】    

沖縄弁護士会男女共同参画基本計画

 
第1 総論
    我が国においては、日本国憲法に個人の尊重(13条)と法の下の平等(14条)がうたわれ、1999年に男女共同参画社会基本法が制定されるなど、男女平等に向けた様々な取り組みが進められてきた。しかしながら、世界経済フォーラム(WEF)が発表した2019年のジェンダー・ギャップ指数において、日本の指数は0.652、総合順位は対象の153カ国中121位と過去最低の順位を記録し、2003年に内閣府男女共同参画推進本部により設定された「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合が30%程度になるよう期待する」との目標達成が断念されるなど我が国の男女平等の実現に向けてはいまだ多くの課題が存在している。
    日本弁護士連合会においては、2002年に開催された第53回定期総会において「人権擁護と社会正義の実現を標榜する弁護士の集団である弁護士会こそ、両性の平等という憲法の理念を実現すべく、男女共同参画を積極的に推進し、社会のモデルとなるべきである。」と宣言し、2018年には「第三次日本弁護士連合会男女共同参画推進基本計画」を策定して、基本的目標のために2022年度までの5か年間に取り組むべき具体的施策を定めるなど、各単位会に対しても個別の取組みを求めている。
沖縄弁護士会はこれまでも会内における男女共同参画を進めてきたが、その取組みはいまだ道半ばと言わざるを得ない。当会における女性会員の割合は、2021年1月31日時点で約14%(40名)であり、全国平均の19%を下回っているとともに、女性会員を含め多様な会員が会務において障壁なく参加できる環境の整備についてはいまだ課題が残されている。
当会は、2020年7月22日の定期総会において、男女共同参画の取組みを発展・強化させ、会員が会内でより活動しやすい環境を整備し、多様な人々の司法アクセスの確保や法的ニーズに応え、もって社会のあらゆる分野における男女共同参画の推進に寄与することを目指し「男女共同参画を推進する宣言」を採択した。
    「男女共同参画を推進する宣言」においては、活動指針として男女共同参画を推進するための「基本計画」を整備することを掲げた。そして、基本計画の整備にあたり、2020年10月に実態調査のための会員向けアンケートを実施した。この回答結果を踏まえ、現状における課題、今後5年間の個別目標、具体的施策を整理し、「沖縄弁護士会男女共同参画基本計画」を次のとおり定める。
当会は、今後目標達成に向けて、同計画に基づき具体的施策の取組みを進めていく。また、必要に応じて具体的施策の検討・見直しを行うとともに、5年をめどに具体的施策の取組み状況と目標達成状況を検証して、その後の目標及び具体的施策の再設定を行うものとする。
 
第2 政策・方針決定過程への女性会員の参画拡大
 1 目標
   (1) 理事会役員(副会長・理事)について、副会長は1名以上、理事は2名以上など、少なくとも理事会役員に3名以上の女性会員が就任することを目指す。
   (2) 常議員については、女性会員の割合を30%以上とすることを目指す。
    (3) 法定委員会(資格審査会・綱紀委員会・懲戒委員会)については、女性会員の割合を会員の女性割合と同程度以上になることを目指す。
   (4) 各委員会において、女性会員がいない委員会を今後5年間でゼロにすることを目指す。
 2 具体的施策
(1) 理事会・常議員会・各種委員会の男女共同参画状況について、実態を把握し、定期総会において会員に報告・周知する。
(2) 女性会員が理事会役員になること、委員会活動に参加することなどの阻害要因を分析し、それを解消する工夫・経験等を調査し、女性会員の参画拡大のための環境を整備する。
(3) 理事会・常議員会・委員会の開催方法について、日中時間帯に開催する、WEB会議を利用するなど女性会員の参画拡大を推進するための環境を整備する。
(4) 会長(理事会)・常議員と女性会員の意見交換会などを実施し、会務の在り方について会員の意見を聴取する機会を設ける。
 3 基本的考え方
1) 政府は、2020年12月に第5次男女共同参画基本計画において「2020年代の可能な限り早期に指導的地位に女性が占める割合が30%程度となるよう目指して取組を進める。」との新しい目標を設定した。その中で、弁護士会に対しては、弁護士会内部でのクォーター制を含めた積極的改善措置(ポジティブ・アクション)の更なる取組、ワークライフバランスの実現に向けた取組、法曹養成課程における女性法曹輩出のための取組等が要請されている。
   (2)  日本弁護士連合会(以下、「日弁連」という。)は、2018年に「第三次日本弁護士連合会男女共同参画推進基本計画」を策定し、同基本計画において、政策・方針決定過程への女性会員の参画は、その組織の政策に女性の関心事項が反映されるために必要であるとともに、民主主義の要請でもあること、また日弁連は「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を使命とし、人権感覚に鋭敏であるべき法律専門家集団として、ジェンダー・バイアス(性に基づく偏見)排除の担い手となり、社会の中で存在感をもって男女共同参画社会の実現のリーダーとなるためにも、日弁連の政策・方針決定過程への女性会員の参画拡大は極めて重要な問題であるとして取り組んでいかなければならないとして、男女共同参画推進に向け積極的な取組みを行っている。
3) 当会においても、男女共同参画の実現にあたり女性会員が会長に就任する意義は大きい。しかしながら、会長としての職務や役割の大きさ、適任と思われる年代(修習期)などからして、現段階で具体的目標を設定することは時期尚早であると言える。したがって、会長については5年後をめどに目標・施策を検討する。
(4)  男女共同参画の実現にあたり、女性会員が執行機関である理事会役員(副会長、理事)に就任する意義は大きい。したがって、会長を補佐し会長が欠けたとき又は会長に事故あるときに会長の職務を行う副会長については、1名以上、会長の委嘱を受けて本会の常務を執行することができる理事については、2名以上の女性会員が就任することが望ましいが、少なくとも理事会役員に3名以上の女性会員が就任することを目指すものとする。また、今後理事会役員に就任することが予想される55期以降の女性割合は、会員全体の18%であることにも鑑みて上記の目標とした。
(5)  常議員会には様々な年代(修習期)の会員が参加することが望ましく、男女共同参画の実現にあたっては、若手会員・女性会員などの積極的参加が望まれる。よって、常議員に占める女性会員の割合は、当会会員に占める女性の割合以上に引き上げ、30%以上とすることを目標とする。
 (6) 法定委員会(資格審査会・綱紀委員会・懲戒委員会)は、弁護士自治を維持するうえで不可欠な委員会であり、会員の多様な意見を反映させる会議体である必要があることから、女性会員の割合を会員の女性割合と同程度以上になることを目標とする。
 (7) 2020年度現在、49の委員会(WG・PTを含む)のうち、9の委員会には女性会員が一人も所属していない。当会の様々な政策・方針決定過程における男女共同参画を進める必要から、今後5年をめどに女性会員がいない委員会をゼロにすることを目標とする。
 (8) アンケートでは女性会員が会の役職に就任することへの支障として、「家庭に家事・育児・介護等の負担がある」(女性会員回答者の約80%)、「会務による夜間帯や長時間の拘束が生じる」(女性会員回答者の約80%)等の意見が挙げられた。政策・方針決定過程への女性会員の参画拡大のためには、女性会員に過度な負担をかけることのないよう十分配慮しながら、参画促進のための環境整備(会議時間の短縮、日中の時間帯での開催、参加方法の多様化等)を進めることが必要である。また、会務の在り方や環境整備について、会長(理事会)・常議員との意見交換会などを実施するなどして、会員の意見を聴取する機会を設けることも必要である。
 
第3 仕事・会務活動と家庭の両立支援
1 目標
(1) 育児期間中の会費免除制度の見直しを検討する。
(2) 会員が育児をしながら仕事・会務活動が続けられるための支援策を策定する
(3) 介護と仕事の両立の問題に着手する。
2 具体的施策
  (1)  産前産後・育児期間中の会費免除制度につき、利用状況等の調査・分析を行い、より利用しやすい制度の見直しを検討し、策定する。 
  (2) 委員会や研修について、WEB会議の利用、日中時間帯の開催、研修録画の視聴を可能とするなど、育児・介護等を担う会員が会務活動や研修に参加しやすい制度を検討し、策定する。
  (3) 育児と両立しながら仕事・会務活動を行えるように、一時預かり保育の利用、保育業者との提携・紹介などの保育サービスを検討する。
  (4) 介護と仕事の両立について、会員の置かれた状況、支援への要望等について実態調査をする等の取組みに着手する。
3 基本的考え方
  (1) ワークライフバランスを健康的に図ることは、会員が性別に関わりなく、その個性と能力を十分発揮しながら充実した仕事・会務活動を継続して行う基礎であり、男女共同参画推進の不可欠の前提となるものである。とりわけ、育児や介護については、憲法第24条の「両性の本質的平等」の理念に基づき、男女共同して取り組まなければならない。そしてその実現は、個々の会員の自助努力だけでは困難であり、当会全体として取り組むべき課題といえる。
  (2) 当会では産前産後・育児期間中の会費免除制度を設け会員の支援にあたってきたが、これまでかかる会費免除制度の成果についての検証はなされてこなかった。産前産後・育児期間中の会費免除制度をより利用しやすく実りある制度とするべく、これまで会費免除制度を利用した会員、育児期間はあったが利用しなかった会員などに対する調査・分析をし、制度の見直しを検討する。
  (3) 当会では委員会活動や研修等が盛んに行われているところ、アンケートの結果、育児中の会員が委員会活動や研修等に参加しやすい制度を求める声は90%近くにも上った。WEB会議の利用や開催時間を日中にする、研修録画を後日視聴できることにするなど、委員会活動や研修の実施方法についての検討が必要である。
  (4) 今後、高齢化が特に進んでいくことが予想されていることから、介護を担う会員に対する支援についても取り組んでいく必要がある。
 
第4 セクシュアル・ハラスメント、性別による差別的取扱いの防止
1 目標
(1) セクシュアル・ハラスメントや性別による差別的取扱い(以下「セクハラ等」という。)が許されないことを会員に周知し、セクハラ等の防止を強化する。
(2) セクシュアル・ハラスメント苦情相談窓口を会員に周知するとともに、セクシュアル・ハラスメントと複合的に生じやすい他のハラスメント行為も含めた利用についても検討し、その防止と適切な被害者の救済を図る。
(3) 性別による差別的取扱い防止のための制度を策定し、性別による差別的取扱いの防止と被害の救済を図る。
2 具体的施策
(1) 新入会員研修にセクハラ等の防止に関する事項を含めるとともに、全会員を対象とした研修を継続的に実施する。
(2) セクシュアル・ハラスメント苦情相談窓口について、利用方法をホームページのトップページで周知する、匿名での相談やメールでの相談も可能にするなど、利用しやすい制度となるよう改善する。
(3) セクハラ等についての実態調査を実施し、セクハラ等の根絶に向けた検証を行う。
(4) 苦情相談について、セクシュアル・ハラスメントと複合的に生じやすい他のハラスメント行為も含めた利用についても制度を拡充する方向で検討を進める。
(5) 性別による差別的取扱い防止に関する規程を制定し、性別による差別的取扱いの防止と被害の救済制度を策定する。
3 基本的考え方

  (1セクシュアル・ハラスメントは日本国憲法に規定する両性の本質的平等にもとり、基本的人権を侵害する行為である。当会は「セクシュアル・ハラスメントの防止等に関する規程」「セクシュアル・ハラスメントの防止に関する指針」を設け、会員によるセクシュアル・ハラスメントが生じないよう整備しているが、アンケートにおいては「身体的特徴や容姿の良し悪しを話題にされた」(約40%)「性的な冗談を交わされた、見聞きした」(約25%)との回答が多く寄せられるなど、その取組みは未だ不十分といわざるを得ない。

      一方で、「セクシュアル・ハラスメントの防止等に関する規程」に基づく苦情相談は現在まで寄せられたことはない。その理由としては、相談窓口の周知が不十分であることや、プライバシーの配慮についての懸念があること等が考えられる。したがって、苦情相談窓口について会員に広く周知するとともに、より利用しやすい制度の策定を進める必要がある。
2 セクシュアル・ハラスメントがパワー・ハラスメント等の他のハラスメントと複合的に生ずることもあることから、他のハラスメント行為も含めた苦情相談窓口の利用についても検討を進める。
 (3 性別による差別的取扱いの防止に関する規程を制定し、その防止と被害の     救済制度を充実させる。
 
第5 その他男女共同参画実現のための取組み
1 目標
(1) 当会における男女共同参画についての理解・関心を会員に促し、男女共同参画を推進する。
(2) 司法におけるジェンダー・バイアスに対する会員の意識啓発の取組みを行う。
(3) 会員の職務上の氏名による業務遂行、活躍の場を推進・支援する。
(4) 当会の公式行事の開催や印刷物の配布に際し、男女共同参画に配慮した内容となっているかの検討を十分に行う。
(5) 今後5年をめどに基本計画の達成を目指し、さらなる男女共同参画の実現を推進する。
2 具体的施策
(1) 男女共同参画に関する意見交換会・シンポジウム・研修などの企画を実施するとともに男女共同参画推進のための広報活動を推進する。
(2) 多くの会員に司法におけるジェンダー・バイアスの問題について理解を深めるための研修を実施する。
(3) 会員の職務上の氏名による業務遂行に際し、生じている障壁について調査するとともに、具体的施策について検討する。
(4) 公式行事による企画の開催や印刷物の配布に際し、男女共同参画の視点から留意すべき事項について、日弁連が作成した「公式企画の実施にあたり基本的人権擁護等の観点から留意すべき事項に関するガイドライン」を会員に周知徹底するとともに、行事の開催、印刷物の配布を決定する組織(理事会・常議員会等)がチェックリスト等によるチェックを行うこととする。
(5) 毎年、基本計画の実施状況を検証し、定期総会においてその結果を報告する。
(6) 今後5年をめどに、基本計画実施状況の検証結果をふまえた具体的施策の再設定を行う。
3 基本的考え方
(1) 基本計画を実行していくためには、会員の男女共同参画に関する理解が必要である。多様な働き方を尊重しながら、会員が仕事・会務活動を行えるための環境整備を進めていくためにも様々な立場にいる会員(女性会員・育児をしている会員・勤務弁護士など)による意見交換会等を行い、会員間の理解を深めていく必要がある。また、男女共同参画についてのシンポジウム・研修などを実施するとともに会員への広報活動を推進する。
(2) 司法におけるジェンダー・バイアスに基づく差別等を是正するため、それを理解するための研修等を実施し、会員の意識啓発を推進する。
(3) 当会は、民法750条が定める夫婦同氏の強制は、個人の尊厳(憲法13条)、婚姻の自由(同24条)、平等権(同14条)を侵害し、女性差別撤廃条約第16条第1項にも反するものとして反対し、選択的夫婦別姓制度の早期実現をもとめる会長声明を複数回にわたり発してきた。そして、今後も同制度の実現を目指す活動を継続していくものである。もっとも、同制度が実現しない現在、当会における多くの女性会員が職務上の氏名により弁護士業務を遂行せざるを得ない状況にあり、アンケートの結果によれば、回答した女性会員の約35%が、職務上の氏名で不便を感じているとの結果であった。したがって、会員の職務上の氏名による業務遂行における障壁を調査し、それを取り除くための具体的施策の検討を行う。
(4) 弁護士会が主催ないし共催する企画や、弁護士会の名の下に編集・発行する印刷物において、男女平等に配慮した内容でなければならないことは当然のことである。この点、日弁連は「公式企画の実施にあたり基本的人権擁護等の観点から留意すべき事項に関するガイドライン」を策定しており、留意事項として「男女共同参画に対する配慮」が盛り込まれている。
当会において、この点についてのチェック体制は確立していない。上記ガイドラインの趣旨を徹底するため、チェックリスト等を作成し、行事の開催、印刷物の配布を決定する組織(理事会・常議員会等)がチェックリスト等によるチェックを行う体制を確立する。
(5) 当会における男女共同参画を推進し、実効性あるものとするため、基本計画の実施状況を毎年検証し、定期総会においてその結果を報告するとともに、今後5年をめどに、検証結果をふまえた具体的施策の再設定を行う。
 
 
以上
 
2021年(令和3年)3月17日
沖 縄 弁 護 士 会

 

 
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