男女共同参画を推進する宣言
投稿日時:【 2020年 07月 22日 】    

 

男女共同参画を推進する宣言
 
 誰もが個人として尊重され(日本国憲法13条)、性別等によって差別されず(同14条)、能力や個性を生かし活躍できる社会を作ることは、憲法の理念を実践するうえでも非常に重要である。とりわけ、男女共同参画社会の実現は、女性にとっても男性にとっても生きやすい社会を作ることであり、「21世紀の我が国社会を決定する最重要課題」(男女共同参画社会基本法前文)とも言える。しかし、わが国にはいまだ多くの課題が存在し、他の先進諸国と比較しても十分とはいえない状況にある。
当会は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士により構成される団体として、会内における男女共同参画を進めてきた。しかし、その取組みは道半ばであり、いっそうの自覚をもって、会内における男女共同参画を推進するための総合的かつ統一的な取組みを行う必要がある。かかる取組みは、会員が会内で活動しやすい環境を整備するものにとどまらず、多様な人々の司法アクセスを可能にし、法的ニーズに応えることにつながる。そして、地域社会に対して男女共同参画に関する情報を積極的に発信していくことで、社会のあらゆる分野における男女共同参画の推進に寄与することになる。
そこで当会は、会内における男女共同参画を推進するため、下記の活動指針を実現していくことを宣言する。
1 男女共同参画の推進をはかるため「基本計画」を作成する。
2 会務活動における政策・方針決定過程への女性会員の参画の拡充を推進する。
3 男女問わず、出産・育児、介護等の負担を担う会員が、会務活動や研修などに参加しやすくするための支援策を検討・整備する。
4 会員の就職・処遇、取扱業務等における性別による差別的取扱いやセクシュアル・ハラスメントを防止するため、既存の制度の充実及び新たな制度の創設を図る。
5 男女共同参画の推進に関し、会員の理解を深めるため、研修や啓発を一層充実させる。
 
以上のとおり宣言する。
 
2020年(令和2年)7月22日
沖 縄 弁 護 士 会
 
 
 
 
                                                         提 案 理 由
 
1 政府・社会の動向
 我が国の女性の人権保障は長年著しく不十分であった。歴史的には、1946(昭和21)年、日本国憲法において初めて男女平等が謳われ(同14条、24条)、初めて女性の参政権が行使された。
その後、1985(昭和60)年に男女雇用機会均等法、1999(平成11)年に男女共同参画社会基本法が制定され、2003(平成15)年には、「社会のあらゆる分野において、2020(令和2)年までに、指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度になるよう期待する」(内閣府男女共同参画推進本部)との目標が設定された。
男女共同参画社会基本法に基づき、2010(平成22)年には第3次男女共同参画基本計画が閣議決定され、ワーク・ライフ・バランスの推進や子育て支援等の施策が定められた。2015(平成27)年には第4次男女共同参画基本計画が閣議決定され、「①男女が自らの意思に基づき、個性と能力を十分に発揮できる、多様性に富んだ豊かで活力のある社会、②男女の人権が尊重され、尊厳をもって個人が生きることのできる社会、③男性中心型労働慣行等の変革等を通じ、仕事と生活の調和が図られ、男女が共に充実した職業生活その他の社会生活及び家庭生活を送ることができる社会、④男女共同参画を我が国における最重要課題として位置付け、国際的な評価を得られる社会」が目指す社会として提示された。男女共同参画社会の実現に向け、2015(平成27)年には女性の職業生活における活躍の推進に関する法律が、2018(平成30)には政治分野における男女共同参画の推進に関する法律が施行された。
このように、男女共同参画に関する法整備は一定程度進められてきた。
もっとも、我が国では、国会議員、経営管理職、教授・専門職等、社会でリーダーシップを発揮すべき分野や意思決定の分野で男女差が大きいことが指摘されている。世界経済フォーラムが毎年発表するジェンダー・ギャップ指数において、2019(令和元)年の日本の総合スコアは0.652(平等なら1、最低は0)であり、調査対象153か国中121位と過去最低の順位であった(2018年は149か国中110位)。
また、男女共同参画を進めるうえでも性差別の是正は重要であるが、近年の社会の動きとして、性差別に対して新しい形の抗議運動が積極的に行われている。例えば、2017(平成29)年以降、過去のセクシュアル・ハラスメントや性的暴力の被害体験を告白・共有する世界的な「#MeToo」運動が注目された。2019(令和元)年以降は、性暴力とそれに関する司法判断への抗議を訴える「フラワーデモ」、職場で女性がハイヒールおよびパンプスの着用を義務づけられていることに抗議する「#KuToo」運動が、日本全国に広がった。2018(平成30)年には、複数の大学で、医学部入学試験における女性に対する差別が長年ほぼ慣習化されていたことが明らかとなり、社会に強い批判を呼び起こした。
性差別の是正を求める社会の動きは、性差別が依然として根強く残っていることを示すものであり、注目すべきある。
 
2 弁護士及び弁護士会が果たすべき役割と課題
弁護士は、人権擁護と社会正義の担い手として市民と近い距離で接しており、社会に与える影響も大きいことから、弁護士及び弁護士会は、個人の尊厳、両性の平等という憲法の理念を積極的に実践するべきである。
そして、男女共同参画が未だ不十分な我が国社会において、弁護士会が会内で男女共同参画を推進することは、弁護士が性別に関係なく個人として尊重され、自らの個性と能力を十分に発揮するために不可欠であるとともに、地域社会に対して、男女共同参画に関する情報を積極的に発信していくことで、社会のあらゆる分野における男女共同参画の推進に寄与することになる
この点について、日本弁護士連合会は、2002(平成14)年5月に開催された第53回定期総会において、「ジェンダーの視点を盛り込んだ司法改革の実現をめざす決議」を採択し、その提案理由において「本来、弁護士会は、弁護士の強制加入団体として法曹界の重要な一翼を担うものであり、弁護士会における男女共同参画の実現なくして男女共同社会の実現はありえない。また、人権擁護と社会正義の実現を標榜する弁護士の集団である弁護士会こそ、両性の平等という憲法の理念を実現すべく、男女共同参画を積極的に推進し、社会のモデルとなるべきである。」と宣言した。
その後、日弁連は、2007(平成19)年4月に制定した「日本弁護士連合会男女共同参画施策基本大綱」及び同年5月の第58回定期総会で採択された「日本弁護士連合会における男女共同参画の実現をめざす決議」に基づき、2008(平成20)年3月に「日本弁護士連合会男女共同参画推進基本計画」を策定した。その後も5か年ごとに取組みの検証と計画の見直しを行い、2013(平成25)年3月には「第二次日本弁護士連合会男女共同参画基本計画」を策定した。2018(平成30)年1月には「第三次日本弁護士連合会男女共同参画基本計画」を策定し、同年から2022(令和4)年度に取り組むべき重点項目として、「男女共同参画推進体制の構築・整備」「研修・啓発活動」「政策・方針決定過程への女性会員の参画拡大」「収入と所得・業務等に関する男女会員間の格差の縮小」「性差別的な言動や取扱の防止」「仕事と生活の両立支援」等を挙げた。これらの項目については、各弁護士会においても、その具体的実情に照らし、会内における個別の取組みが求められているというべきである。
 
3 当会における課題と具体的目標
沖縄県は、長年にわたり配偶者等からの暴力について、相談件数やいわゆるDV保護法に基づく保護命令発令件数が全国でも高順位(人口10万人当たりで換算した場合)であり、その被害者は女性が多い。
こうした地域社会に特徴的な性差別を解決するためにも、その背景にある旧来的固定的な価値観を見直し、女性の声がより地域社会に反映される男女共同参画社会を実現する必要がある。
そして、当会は、地域社会の模範となるべく会内の男女共同参画を推進すべき立場にある。
実際、当会は、会内における男女共同参画を少しずつ進めてきた。2008(平成20)年以降、出産時の会費免除の手続に関する規則、育児期間中の会費免除の手続等に関する規則、セクシュアル・ハラスメントの防止に関する規程を定めた。また、一部の研修・会務活動・執行部運営等においては研修・会議の開催時間の見直しを進めた。
本年度は当会で初めて女性会長が誕生し、執行部会議の開始時間を抜本的に変更等したため、男女問わず、家庭の事情等から夕方以降の会議参加が難しい会員も執行部に加わることができた。執行部12名のうち女性会員は過去最高の4名を占める。
しかしながら、次年度以降、本年度のような執行部の男女構成を維持していくことは決して容易ではない。
そこで、当会は、男女共同参画の取組みがいまだ不十分であることを自覚し、会内における男女共同参画推進のための総合的かつ統一的な取組みとして、「基本計画」を作成する。
具体的には、会務における政策・方針決定過程への女性会員の参画を拡大していくことが重要であることから、会務への参加の障壁となっている具体的事由の調査・分析を行い、同調査・分析の結果を受けて必要な施策を整備していく。
また、会員が個人として尊重され、自らの個性と能力を十分に発揮するため、各人が理想とする形でのワーク・ライフ・バランスを実現できる環境の整備が必要である。出産・育児、介護等の負担を担う会員について、会務活動・研修等への参加が容易となるような制度・設備の構築に取り組んでいく。
さらに、会員の就職・処遇、取扱業務等において、性別による差別的取扱いやセクシュアル・ハラスメントが生じないように既存の制度を充実させ、新たな制度の創設を図る必要がある。特に、当会のセクシュアル・ハラスメントの防止に関する規程については、会員が利用しやすく、かつ、実効的な制度にするべく、制度内容の周知・充実を図る。
上記の各施策の必要性については、会員の理解が不可欠であるから、定期的に、男女共同参画の重要性を認識、理解するための研修や啓発の機会を確保したい。
 男女共同参画が真に目指しているのは、単なる「男女」の平等の実現ではなく、誰もが個人として尊重される社会の実現である。当会は、2019(平成31)年に「レインボー宣言~性の多様性を尊重し性的少数者のさらなる権利保障に努めることの宣言~」を決議したが、この内容も含めて、会員の理解を深める必要がある。
以上、当会では、男女共同参画の推進に関する基本計画を作成し総合的かつ統一的な取り組みを進めるとともに、様々な施策の整備や制度の充実を図るべく、本宣言案を提案する。
以 上
 

 
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