勾留理由開示請求に対する那覇地方裁判所の違憲・違法が強く疑われる対応に対し抗議し再発の防止を求める会長声明
投稿日時:【 2020年 01月 08日 】    

 

勾留理由開示請求に対する那覇地方裁判所の違憲・違法が強く疑われる対応に対し抗議し再発の防止を求める会長声明
 
1 2019(令和元)年12月21日,高江ヘリパッド建設に反対する6名の者が,正当な理由なくアメリカ合衆国軍隊が使用する施設又は区域内であって立ち入ることを禁じた場所である在沖米軍海兵隊北部訓練場内に侵入したとして,刑事特別法違反の被疑事実により同日逮捕された。同月23日,那覇簡易裁判所裁判官が検察官の勾留請求を却下したものの,同日中に検察官から準抗告が申し立てられ,翌24日19時頃,準抗告が認容され,勾留状が発付された。
  勾留された被疑者らの各弁護人によれば,弁護人らは,同月27日以降,順次,那覇地方裁判所(以下「那覇地裁」という。)に対し勾留理由開示の請求を行った。これに対し,那覇地裁は,各弁護人に対し,勾留理由開示期日は2020(令和二)年1月6日以降に行うとの連絡をしてきた。
そもそも,被疑者らの勾留期間は,2020(令和二)年1月1日までであった。勾留理由開示請求は,「保釈,勾留の執行停止若しくは勾留の取消があつたとき,又は勾留状の効力が消滅したときは,その効力を失う」ものとされている(刑事訴訟法第82条第3項)。それにもかかわらず,那覇地裁が勾留期間満了後である2020(令和二)年1月6日以降に開示期日を開催するとしたことは,勾留延長を当然の前提として期日指定をしようとしたとの強い疑念を生じさせる対応であり,重大な問題がある。
2 憲法第34条は,「何人も,正当な理由がなければ,拘禁されず,要求があれば,その理由は,直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。」と定め,被拘束者に対し勾留理由開示請求権を認めている。
憲法第34条を受けて,刑事訴訟法及び刑事訴訟法規則に勾留理由開示の手続が定められており,刑事訴訟規則第84条は,「勾留の理由の開示をすべき期日とその請求があつた日との間には,5日以上を置くことはできない。但し,やむを得ない事情があるときは,この限りでない。」と規定している。かかる時間制限は基本的には絶対条件であり、したがって、「やむを得ない事情」とは,勾留理由開示請求権の重要性に鑑み,例えば勾留理由開示請求が複数競合して5日以内に開示期日を開催することが物理的・人員的に到底不可能な場合など極めて例外的な場合に限られると解釈されている。
3 那覇地裁から期日の連絡を受けた弁護人らは,再三にわたり請求日より5日以内に勾留理由開示期日を開催するよう求めたが,那覇地裁はこれを拒否した。
そればかりか,那覇地裁は,弁護人らから「やむを得ない事情」について説明するよう求められたのに対し,「やむを得ない事情を説明する必要はない。」と応答するだけで,説明を拒否し続けた。
おそらく,那覇地裁は,年末年始の閉庁日との関係で,開示期日を閉庁日明けに指定しようとしたものと思われる。
しかし,今や,刑事訴訟法において勾留されたすべての被疑者に対し国選弁護人請求権が認められており,現に,平日・休日を問わず,国選弁護人が選任されている。勾留理由開示請求権は,憲法上の権利であり,身体拘束からの解放に向けた重要な手続である。年末年始の閉庁期間に入るからというだけで,勾留理由開示期日を先延ばしすることは到底許されない。確かに,現行刑訴法制定・施行当時であれば,閉庁日に公開法廷を開くということは大変な作業を伴ったかもしれない。しかし,情報通信技術が発達した今日において,臨時に公開法廷を開くことがそれほど困難であるとは思われない。年末年始の閉庁期間に入るとしても,那覇地裁は,請求日より5日以内に勾留理由開示期日を指定する義務があるというべきである。
今回の那覇地裁の対応は,被疑者の憲法上の権利より裁判所の都合を優先させたものと考えられ,そうであれば,違憲・違法が強く疑われるのであり,断じて許されない。
4 本件の各被疑者らは,いずれも,2019(令和元)年12月30日に検察官の判断で釈放されたが,裁判所の対応の瑕疵が治癒されるものではない。那覇地裁の今回の対応状況に照らすと,今後も,本件と同様の事態が発生する懸念を拭い切れない。
そこで,当会は,被疑者が持つ憲法上の権利を軽視し,刑事訴訟規則が求める期限内に勾留理由開示期日を開催しようとせず,さらに同期限内に開示期日を開催することができないことの説明をしなかった那覇地裁の,違憲・違法が強く疑われる対応に断固抗議するとともに,再発防止の徹底を求めるものである。
 
2020年(令和二年)1月8日
沖縄弁護士会    
会 長 赤 嶺 真 也

 
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