クレジット過剰与信規制の緩和に反対する会長声明
投稿日時:【 2019年 09月 26日 】    

 

クレジット過剰与信規制の緩和に反対する会長声明

 

1 経済産業省産業構造審議会商務流通情報分科会割賦販売小委員会は,クレジットカード等の交付・付与時の過剰与信規制について,①利用限度額10万円以下のクレジットカード等の交付・付与時には,指定信用情報機関への信用情報の照会義務(割賦販売法第30条の2第3項)及び基礎特定信用情報の登録義務(同法第35条の3の56第2項及び第3項)を免除すること,②クレジットカード会社独自の「技術やデータを活用した与信審査方法」を使用する場合は,指定信用情報機関への信用情報の照会義務及び基礎特定信用情報の登録義務も免除すること,③クレジットカード会社独自の「技術やデータを活用した与信審査方法」を使用する場合には,利用限度額30万円を超えるクレジットカード交付・付与時に課されている支払可能見込額調査義務(同法30条の2第1項)も免除すること,等の規制緩和(以下「本件規制緩和」という。)を提案し,検討している(同委員会「中間整理~テクノロジー社会における割賦販売法制のあり方~」令和元年5月29日)。

 

2 指定信用情報機関への信用情報の照会義務及び基礎特定信用情報の登録義務,支払可能見込額調査義務は,クレジット業界全体で多重債務問題を防止する目的から,2006年の貸金業法改正及び2008年の割賦販売法改正において設けられた。これは,それまでクレジット会社による過剰与信の防止が努力義務(同法38条)に止まっていたために実効性に欠け,多重債務被害に繋がったことに対する反省に基づくものである。

 

 このような経緯で設けられたにもかかわらず,利用限度額が10万円以下の少額の場合に指定信用情報機関への信用情報の照会義務及び基礎特定信用情報の登録義務を免除すること(①)は,すでに他社との関係で多重債務状態にある者への過剰与信となる危険性や,少額の与信情報が指定信用情報機関に登録されないまま,少額のクレジットカードを複数利用することで多重債務状態に陥る危険性を含んでいる。実際に日弁連が実施している破産事件記録調査によれば,負債額が100万円未満で破産に至った者の割合は7.51%(2017年)と一定数存在し,近年この割合は増加傾向にあるから,少額与信であれば多重債務に至るおそれが低いとは言えない。

 

 次に,クレジットカード会社独自の「技術やデータを活用した与信審査方法」を使用する場合に,指定信用情報機関への信用情報の照会義務及び基礎特定信用情報の登録義務を免除すること(②)は,他社の債務状態を把握しないまま過剰与信となる危険性を含んでいる。また,当該クレジットカード会社の与信情報を他のクレジットカード会社の与信審査に反映できないことで,クレジット業界全体で情報共有し多重債務を防止するという目的も果たすことができなくなってしまう。

 

 さらに,クレジットカード会社独自の「技術やデータを活用した与信審査方法」を使用する場合に支払可能見込額調査を免除する(③)のであれば,前提として,各クレジットカード会社が,過剰与信防止のため,客観的に合理性をもった与信審査基準を設けなければならない。しかし,客観的に合理性をもった与信審査基準か否かを検証することは困難で,クレジットカード会社独自の与信審査方法による過剰与信規制の実効性確保は難しいと言わざるをえない。

 

3 他方,インターネットやスマートフォンの急速な普及により,若年者がキャッシュレス決済を利用して商品やサービスを購入する機会は格段に増えており,これに伴い,クレジット決済を抵抗感なく利用し債務を負うリスクや,クレジット決済を利用した悪徳商法被害に遭うリスクが高まっている。加えて,2022年4月には,民法改正により成年年齢が18歳に引き下げられ,満18歳で未成年者契約の取消権を失うことになることから,若年の多重債務者や消費者被害の増加が懸念されている。

 

かかる状況において本件規制緩和を実施することは,極めて危険であり,クレジット業界全体で多重債務問題を防止するという法の目的に反する。

 

よって,当会は本件規制緩和に反対するものである。

 

 

 

2019年(令和元年)9月26日

沖縄弁護士会

 会 長  赤 嶺 真 也

 

 

 

 
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