PFOS等による環境汚染について,国及び地方自治体による米軍基地内への立入調査と汚染除去・防止対策への積極的な取り組みを求める会長声明
投稿日時:【 2019年 07月 24日 】    

 PFOS等による環境汚染について,国及び地方自治体による米軍基地内への立入

調査と汚染除去・防止対策への積極的な取り組みを求める会長声明

  

1 近年,沖縄県内,特に嘉手納飛行場及び普天間飛行場周辺の河川ないし地下水から,有機フッ素化合物であるペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やペルフルオロオクタン酸(PFOA,以下両者を「PFOS等」という。)が高い濃度で検出されていることが明らかになった。

  PFOS等は,環境中への残留性,生物への蓄積性,発がん性などから,残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約で国際的に製造・使用が制限されており,PFOSについては化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律において製造等が禁止されている。PFOAは,国際がん研究機関(IARC)により発がん性のおそれがある物質として分類されており,飲料水などとして摂取するなどした場合の健康被害も懸念されている物質である。

  沖縄県が平成30年度冬季に実施した有機フッ素化合物環境実態調査によれば,普天間飛行場周辺のほか,嘉手納飛行場周辺の比謝川,天願川からも,PFOS等が検出され,嘉手納町の湧き水,屋良ウブガーでは,2100ng/Lが検出された。PFOS等は,国内では水質基準は定められていないが,米国は生涯健康勧告値(人が生涯に渡って飲用しても問題がないレベル)を70ng/Lと定めており(州によっては更に厳しい基準を定めている。),上記の値はその30倍に相当する。

  その原因について,沖縄県は,これらの化学物質は国内では使用が原則禁止されていること,米軍基地内でPFOS等を含む泡消火剤が大量に使用されてきた経緯があることなどから,米軍基地で使用される泡消火剤である可能性が高いと判断している。

2 これは沖縄県民の健康・安全に関わる問題である。すなわち,嘉手納飛行場周辺の比謝川は,北谷浄水場の取水源となっており,その水は宜野湾市のほか那覇市等へも水道水として供給されている。

北谷浄水場では2016年から活性炭によるPFOS等の除去を行っているが,それ以前には,北谷浄水場を供給源とする水道水において,他の浄水場を供給源とする水道水と比較して高濃度のPFOS等が検出されていたことも判明している。また,普天間飛行場の周辺住民を対象にした血中濃度調査で,全国平均の4倍のPFOSの値が検出されており,現在規制に向けて国際的な議論が進んでいる有機フッ素化合物PFHxS(米軍基地内においてPFOS等の代替品として使用されている。)は,全国平均の53倍の値が検出された。

3 この問題が顕在化してから数年が経過するにもかかわらず,米軍基地内での調査はなされていない。

日米地位協定3条は,米軍基地に対する管理権は米国にあることを定めており,立入調査は容易には認められていない。国や地方自治体の立入調査について規定する日米地位協定の環境補足協定及び立入りの日米合同委員会合意(2015年9月28日付け)は,米国から国に対し環境に影響を及ぼす事故発生の通報がなされた場合を前提としている上,在日米軍司令官に立入調査の許否について幅広い裁量を認めている。沖縄県も,立入調査を求めているが(たとえば2019年6月12日付け沖縄県作成の要請書。),現在まで,在日米軍の拒否により,国や地方自治体による米軍基地内での水質調査は実施されていない。

4 沖縄県民の健康・安全を守るためには,まずPFOS等及びPFHxSなどの有害化学物質の汚染源及び原因の特定のため,米軍基地内への立入調査が行われなければならない。沖縄県や普天間飛行場及び嘉手納飛行場周辺の各自治体はもちろんであるが,何より国が,米国に対し,米軍基地内への立入調査を強く求め,汚染の除去・防止に積極的に取り組んでいくことが必要不可欠である。米国ないし在日米軍は,国や地方自治体による立入調査に真摯に応じるべきである。

立入調査の結果,この汚染が米軍由来のものであることが確認された場合,米軍に対し,PFOS等の使用中止や土壌浄化作業などの汚染の除去・防止対策を早急に求めていくべきである。汚染除去・防止対策は,汚染者である米軍・米国が行うべきものであるが,国もその過程に積極的に関与すべきである。

  また,調査や汚染防止対策を講じていく上で,市民や環境NGOにも意見を述べる機会を与えるべきである。その前提として,調査の方法や内容,調査結果,汚染場所,化学物質の種類,汚染浄化内容,今後の浄化計画などは,随時,公表されるべきである。

5 そもそも,根本的問題は,現在の地位協定にある。

地位協定に基づき米軍を受け入れる他国(たとえばドイツなど)では,環境汚染への対応のため受入国や地元自治体により米軍基地内への立入りが認められている。米軍基地に由来する環境汚染が発生した場合の在日米軍による通報義務や国・地方自治体による立入調査の権限などを規定するよう,日米地位協定ないしその環境補足協定を改定することが必要である。

6 水質汚染が明らかになりながら適切な対策が取られてきていないことは,沖縄県民の健康・安全を脅かす重大な人権問題である。

当会は,国,沖縄県,普天間飛行場及び嘉手納飛行場周辺の各自治体に対し,PFOS等の汚染源であると疑われる米軍基地への立入調査と汚染除去・防止対策への積極的な取り組みを求めるとともに,米国ないし在日米軍に対し,国及び地方自治体の立入調査を受け入れるよう強く要請するものである。

 

2019年(令和元年)7月24日

沖縄弁護士会       

 

会 長  赤 嶺 真 也

 
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