沖縄弁護士会 レインボー宣言~性の多様性を尊重し性的少数者のさらなる権利保障に努めることの宣言~
投稿日時:【 2019年 03月 20日 】    

 沖縄弁護士会 レインボー宣言

~性の多様性を尊重し性的少数者のさらなる権利保障に努めることの宣言~
 
 恋愛感情や性的関心をどのような性にもつかという性的指向(Sexual Orientation)や自らの性をどのように認識するかという性自認(Gender Identity)は、その人がその人らしく生き、その人らしく人生の選択を行っていくに際し、大前提となる基礎的なものである。そのため、性的指向及び性自認(SOGI)に関する諸権利は、その人の人格に密接に関連する基本的人権として尊重されなければならず、社会で暮らすすべての人は、これら権利を当然に享受している。そして、かかる諸権利の主体に、性的少数者が含まれることはいうまでもない。
しかし、我が国において、性的少数者は、時として社会的無理解・嫌悪の対象とされてきた。また、生物学的な性的特徴に基づき割り当てられる法律上の性別を前提とすることが求められる法制度や社会制度のなか、当事者として承認されないことから、これまで性的少数者に対し、必要な権利保障がなされてきたとは到底言い難い。性の多様性が認められない社会は、そこに生きる者一人一人のありのままの個性が認められない社会であり、性的少数者、性的多数者を問わず、すべての人にとって、生きづらい社会である。
近年、性別の取扱いの変更や地方自治体におけるパートナーシップ制度の導入といった、法制度やそれに準じる制度が次第に導入され、また民間企業等においては性の多様性に応じた配慮が求められつつあるなど、我々の社会において、SOGIに関する認識の改善と変革の兆しは一定程度みられる。もっとも、依然として性的少数者の個人の尊厳や自己決定権(憲法13条)は違法に侵害され、また性についての平等原則(憲法14条)違反が多く存在するものと評さざるを得ず、今後も、速やかで積極的な是正が求められている。
 私たち弁護士は、法律の専門家として、性的少数者がいまだ直面する多くの諸課題を学び、その孤立感や生きづらさを真摯に知ることで、性の多様性が真に尊重される社会を構築する意義を深く理解するとともに、性的少数者の権利に関する個別の問題に適切に対処できるよう、高い自覚をもって研鑽に努め、諸課題の解決に全力を尽くす必要がある。
 よって、当会は、基本的人権を擁護し社会正義を実現することを使命とする弁護士の団体として、憲法に基づき、性の多様性が全面的に尊重される社会を目指して、研修会や企業等への啓発活動等を実施し、専門法律相談窓口を設置するなど、性的少数者のための法的サポートの検討・研究や諸種の取組みを益々進めていくことを、性の多様性の象徴とされる「虹(レインボー)」の宣言として、ここに表明するものである。
 
2019年(平成31年)3月20日

沖 縄 弁 護 士 会

提 案 理 由
 
性的少数者を含む性の多様性こそが我々の社会の真の姿であること
 身体と心の性が一致しない、あるいは異性愛者ではない人たちは、性的少数者といわれ、近年LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字をとった略称)等と表現されることがある。また、LGBTのようにカテゴリで区別するのではなく、性的指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity)の頭文字を合わせた略称であるSOGIという表現もあり、性の多様性という当該問題の本質をより的確に表すものとして理解されている。
 およそ人について、性自認や性的指向の組み合わせは実にさまざまであり、我々人間社会においてSOGIはいわばグラデーションをなしている。身体も心も男性あるいは女性であり、かつ性愛の対象者が異性(男性ならば女性、女性ならば男性)という性的多数者も、このグラデーションにおいては、その一部にすぎない。
 性自認は、自らの意思で変えたり、治療によって変えたりすることができるものではなく、そのような事柄でもない。性的指向もまた、一生の間に変動することがあっても、自らの意思で変えたり、治療によって変えたりするものではなく、そのような事柄でもない。これは、性的多数者、性的少数者に共通した(ことわり)である。 
 
性的少数者の直面する困難、諸課題はいまだ厳然として存在すること
 このように、性的少数者は、性の多様なあり方をその本来的性質とする実社会において、性的多数者と、その権利・自由を享受する主体としてなんら変わりがない。
しかしながら、性的少数者は、古今東西において、長きにわたって差別の対象とされ、その人権が侵害されてきた。

こうした歴史的偏見・差別をなくすべく、特に1970年代以降、性的少数者や支援者たちにより、差別解消の積極的運動が展開されるようになり、法的権利の獲得や差別撤廃などが求められ、その粘り強い運動の成果は、世界規模で広がっていった。2009年(平成21年)に開催された世界最大級のゲイパレード「サンパウロ・ゲイ・プライドパレード」の参加者が推計320万人余を記録するなど運動が盛り上がる中、2011年(平成23年)、 国連人権理事会は、「性的指向や性自認に基づく暴力行為や差別に重大な懸念を示す決議」を採択した。米国では、2015年(平成27年)6月26日、連邦最高裁判所において同性婚を認める判断が示された。現在では、オランダ、スペイン、カナダ、アルゼンチン、南アフリカ共和国、ウルグアイ、オーストリアなど25カ国において同性婚が合法化され(2019年(平成31年)3月時点)、コスタリカや台湾でも、近々、同性婚が認められる旨の報道がなされている。また、その他、イスラエル、ギリシャ、チェコ、ベネズエラなどの20カ国以上の国が、現在までに登録パートナーシップ制度等を制定するに至っている。

こうした世界的動向を受けて、我が国でも、2003年(平成15年)に「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(性同一性障害特例法)」が成立し、また、地方自治体レベルで同性愛者間のパートナーシップ制度が導入されるなど、性の多様性に関する諸課題を解決するための法制度やそれに準ずる制度の導入といった取組みが、少しずつ成されてきている。また、職場や学校による性的少数者に対する配慮の必要性も認識されてきている。2017年(平成29年)1月に適用された、男女雇用機会均等法に基づくいわゆる「セクハラ指針」においては、性的少数者に対する職場におけるセクシャルハラスメントも、同指針の対象となることが明記されている。2017年(平成29年)3月には、政府が制定する「いじめ防止基本方針」が改訂され、性的少数者である児童生徒への配慮が初めて盛り込まれた。企業や地方自治体においても、採用や福利厚生等においてSOGIにかかわらず平等な取り扱いを行うとするポリシーやガイドラインを策定する傾向が、徐々にみられるようになっている。ここ沖縄における取組みとしては、2016年(平成28年)7月の那覇市によるパートナーシップ制度の導入、2017年(平成29年)1月の浦添市による「レインボー都市うらそえ宣言」や、昨年4月からの浦添高校、本年1月からの那覇高校での制服選択制の導入、また県内企業による同性カップルへのハネムーン対応やレインボーカラーを掲げる、などがみられる。
しかしながら、こうした取り組みは、ごく一部にすぎない。我が国においては、身体的性別と性自認の一致を大前提とした画一的な制度設計、運用が長年行われ、性的少数者が存在しないことを前提とした法制度が構築されてきたこともあり、社会全体への性の多様性に対する理解の広がりや法制度の整備等はまだまだこれからといわざるをえず、性的少数者に対する無理解・差別意識が様々な人権侵害や深刻なトラブルを生じさせているのが現状である。我々の社会は、家庭や地域、学校や職場において、いわれなき偏見・差別を受け、あるいはいわれなき偏見・差別を受けることをおそれ、自身の性的指向・性自認を秘匿して暮らさざるをえないという、孤立感や苦しみ、そして生きづらさを、性的少数者に強いている側面がある。そのため、性的少数者においては、自殺リスクの高さやメンタルヘルスの悪化といった問題も指摘されている。
また、既存の制度においても解決すべき点は多く、一例として、性同一性障害特例法が性別適合手術を事実上の要件とすることの違憲性が争われた特別抗告事件で、最高裁が、合憲と判断しながらも違憲の疑いが生じている旨言及したことは、記憶に新しい(最高裁第2小法廷2019年(平成31年)1月23日決定)。また、パートナーシップ制度においても、法律上の効力は認められておらず、法律婚との乖離は未だ大きいという問題がある。
 
性的少数者をめぐる諸課題は重要な人権問題のひとつであること
 性的指向及び性自認(SOGI)は、人格の本質や生き方と密接に関連し、基本的人権として尊重されるべき重要なテーマである。
 しかしながら、上記のとおり、性的少数者に対する社会的偏見・差別は根強く存在し、その権利保障は著しく不十分である。このような事態は、個人の尊厳(憲法13条)及び平等原則(憲法14条)に抵触する重大な人権問題というべきであり、その解決のため法的、あるいは事実上の制度を充実させ、支援体制を構築することは、喫緊の課題である。なお、2016年(平成28年)、国連人権理事会SOGI人権決議は、性的指向や性自認を理由とした暴力や差別からの保護を国際的な人権課題として取り上げている。 
 我が国においては、本年2月14日、札幌、東京、名古屋、大阪で、計13組の同性カップルにより、法律上の性別が同じ者同士で結婚ができることを求めた訴訟が提起された(「結婚の自由をすべての人に」訴訟)。この訴訟では、「婚姻の自由(憲法24条1項)」の侵害と「平等原則(憲法14条)」違反が主張の柱とされているところ、当該主張は、同性カップルだけでなく、夫婦別姓問題や事実婚への法制度の適用問題といった、婚姻の自由や婚姻における平等をめぐる問題に広く共通するものである。当該訴訟が提起した諸問題については、今後も多角的な面から社会全体で広く議論していく必要があろう。
 
当会及び当会会員が高い自覚をもって取り組む必要性があること
本来、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする(弁護士法1条)弁護士は、性的少数者の問題に関する基本的知識を身につけ、その抱える困難や苦悩を真摯に知り、そのうえで法的にサポートする職業的責務を負っているというべきである。
しかしながら、我々弁護士の多くは、これまで、性的少数者についての人権問題や法的諸課題に十分に取り組んできたとは言い難い。
当会においても、性的多様性の尊重及び性的少数者をめぐる諸課題について、これを重要な人権問題の一つとして位置づけ、積極的な活動を行っていくことは必至というべきである。まずは、当会会員が、当事者や支援者から真摯に学び、またセミナーの開催等地域社会に対し学びの場を提供するなどして、会内外の理解を深めるとともに、性的少数者のための専門法律相談窓口を設置したり、関係する法的制度の整備・拡充への協力など、諸種の取組みを出来る限り速やかに強化する必要がある。
そこで、当会及び当会会員がこの問題における本来の責務を改めて自覚し、これを果たすべく宣言することは、その使命を全うするうえで必要かつ有益と考え、本宣言案を提案する次第である。
以 上

 
印刷用ページ