生活保護世帯の子どもの大学等進学を認め、貧困の連鎖を解消することを求める会長声明
投稿日時:【 2018年 09月 25日 】    

 

生活保護世帯の子どもの大学等進学を認め、貧困の連鎖を解消することを求める会長声明
 
 生活保護行政において、生活保護世帯の子どもが大学等に進学すると実際には家族と同居していても、進学した子どもは別世帯を構成するものと取り扱い、当該子どもに関する生活保護費を支給しない取扱いがなされている。その結果、当該生活保護世帯の受け取れる生活保護費は減額されることになる。
世帯分離と呼ばれるこの運用のために、生活保護世帯の子どもが大学等に進学することを断念することも多く、生活保護世帯の子どもの大学等進学率が33.1%(2016年度内閣府調査)と著しく低く留まる一因となっている。
我が国においては、受験資格を大学等卒業者に限定している資格職は少なくなく、企業への就職においても大学等を卒業していないことは採用において不利益に働くのであって、大学等への進学ができないために生活保護世帯の子どもが就ける職業の選択肢が狭まる現実がある。そして、大学等に通うことができるかどうかで生涯で得られる賃金総額(生涯賃金)にも大きな差が生じるところ、生活保護世帯の子どもの大学等進学率が低いことは、生活保護世帯において貧困の連鎖を生み出す要因の一つとなっている。
大学等進学の際に行われる世帯分離の根拠として、国は、高校を卒業すれば就労して稼働能力を活用すべきであるところ、大学等に就学している状態は稼働能力を活用しているとはいえないとの考え方や、生活保護を受給していない一般世帯との均衡をあげている。
しかし、生活保護法4条1項は、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」と規定しているところ、大学等に進学すれば、その者の稼働能力を高めることとなる蓋然性が高いのであるから、大学等への就学をもって稼働能力を活用していないものと評価することはできない。また、一般世帯の大学等進学率は73.2%(2016年度内閣府調査)に達することからすれば、生活保護世帯の子どもの大学進学を認めても一般世帯との均衡を失するものとはいえない。
2014年1月に施行された「子どもの貧困対策の推進に関する法律」1条は、その目的として、「子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備するとともに、教育の機会均等を図る」とし、2条は、「子どもの貧困対策は、子ども等に対する教育の支援、生活の支援、就労の支援、経済的支援等の施策を、子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのない社会を実現することを旨として講ずることにより、推進されなければならない。」としている。
生活保護世帯の子どもの大学等進学率を高めるために、現在の世帯分離の運用を改めることは、子どもの貧困対策の推進に関する法律の目的や理念に沿うものである。
2018年(平成30年)6月1日に成立した、「生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律」により、生活保護法が一部改正され、大学等に進学した場合に進学準備給付金を支給する旨の規定が追加された。大学等への進学を積極的に支援することを目的とする生活保護法の改善の動き自体は評価すべきものであるが、今後も現在の世帯分離の運用が続く限りは、生活保護世帯の子どもの大学等進学率を高める上での十分な対策とはならないというべきである。  
したがって、当会は、国に対し、大学等に進学する子どもを分離して生活保護世帯から外す現在の生活保護行政の運用を改め、当該子どもの分の生活保護費を支給することを強く求める。
 
 2018年(平成30年)9月25日    
沖縄弁護士会         
会 長  天 方   徹  

 
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