辺野古新基地建設のための土砂投入を強行せず工事を停止し,沖縄県及び沖縄県民との真摯な対話を求める会長声明
投稿日時:【 2018年 07月 25日 】    

 

 辺野古新基地建設のための土砂投入を強行せず工事を停止し,沖縄県及び沖縄県民との真摯な対話を求める会長声明
 
 報道によれば,名護市辺野古の新基地建設を巡り,政府は,来る8月,埋め立て予定地の海域に土砂を投入する調整に入ったとのことである。
 
 辺野古新基地建設は,沖縄県民に加重な基地負担の継続を強いるものであるとともに,辺野古・大浦湾の豊かな自然環境を不可逆的に破壊するものであり,沖縄県及び沖縄県民は,辺野古崎海域を埋め立てて新基地を建設することに対しては,繰り返し反対の意思を示してきた。当会においても,かかる問題は重要な人権問題であるとの立場から,2017年(平成29年)5月30日の定期総会において「辺野古新基地建設工事の停止と沖縄県との真摯な対話を求める総会決議」をしたほか,その他総会決議や会長声明等によって,繰り返し見解を表明してきた。
 
 日本国憲法は,地方自治を保障し,地方自治体が「地方自治の本旨」に基づいて組織,運営されねばならないと定めている(92条)。「地方自治の本旨」は,国から独立した団体において自らの意思にもとづいて運営されるという団体自治と,住民自らの意思に基づいて地域の事項を決定するという住民自治を内容とする。基本的人権の尊重と国民主権の原理のもとにおいて,団体自治は地方分権を通じた自由を,住民自治は地方における民主主義を制度的に保障するものとして,統治機構の根幹を成している。このため,日本国憲法第92条に照らせば,沖縄県民の生命,身体及び財産に大きな影響を及ぼす米軍基地の建設という極めて重大な問題について沖縄県及び沖縄県民の意思が最大限に尊重されるべきことは,憲法上の要請に他ならない。
 
 そもそも,沖縄県に現存する米軍基地は,戦時下において接収された土地と,昭和26年(1951年)のサンフランシスコ講和条約後に「銃剣とブルドーザー」によって強制的に奪われた土地に建設されたものであり,沖縄県や沖縄県民の意思に基づいて建設されたものでは決してない。そして,長年に及ぶ米軍基地負担の過程において,沖縄県民は,殺人や強姦を含む様々な事件・事故,あるいは騒音等の問題に苦しめられてきた。かようななか,国は,またしても沖縄県と県民の意思に反して,新たな米軍基地の建設工事を進めているのである。
 
 米軍に対する施設区域の提供は,住民の生命,身体及び財産に大きな影響を及ぼすものであるにもかかわらず,我が国においては,住民の意向を反映させる法律上の仕組みが一切存在しない。安全保障上の政治判断が必要であることを最大限考慮しても,米軍に対しいかなる区域を提供するかという判断過程において,当該区域住民の意思が一切反映されないという現行法の枠組みは,上記地方自治の本旨に照らし,不当といわねばならない。この点は,日本弁護士連合会も,日米地位協定に関する意見書(平成26年(2014年)2月20日)において,米軍に対する施設区域の提供や返還に当たり,住民や自治体の意見が尊重される仕組みが作られるよう求めているところである。
 
また,いわゆる地方分権一括法の大きな柱の一つは,国と地方公共団体との間に対等・協力の関係を築いていくことであったところ,国が,沖縄県との間で対話の機会すらもたないまま,県や県民世論の反対する工事を強行する現状は,対等・協力の関係とはほど遠いものである。そして,現状のまま土砂の投入を開始することについては,埋立承認の際の留意事項に違反する可能性があるとともに,取り返しのつかない環境破壊を招きかねないという懸念が,沖縄県や県民から表明されているところである。
 
 一度破壊された自然環境を回復するのは,著しく困難である。そのため,国が埋め立て予定地の海域への土砂の投入を開始してしまえば,辺野古・大浦湾の自然環境に不可逆的且つ大規模な破壊をもたらすことになり,後に訴訟の結果がどのようになろうとも,また県民が改めて強い反対の意思を表明しようとも,取り返しがつかないことになってしまう。
 
当会は,このような今般の情勢にかんがみ,あらためて国に対し,県知事の意向や県民世論に抵触する工事を直ちに停止して,沖縄県及び沖縄県民と真摯に対話をすることを求めるものである。
以 上
2018年(平成30年)7月24日
沖縄弁護士会        
会 長  天 方   徹 

 
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