米軍機の相次ぐ事故に強く抗議し、徹底した再発防止を求めるとともに、日米地位協定や法令等の改正を含む実効的な対策を採ることを求める総会決議
投稿日時:【 2017年 12月 14日 】    

米軍機の相次ぐ事故に強く抗議し、徹底した再発防止を求めるとともに、日米地位協定や法令等の改正を含む実効的な対策を採ることを求める総会決議

 

1 近時、米軍機による事故が頻発している。
  例えば、2015年(平成27年)8月12日、伊計島沖で米陸軍所属のH60ヘリが着艦に失敗し、陸自隊員を含む負傷者を出した。2016年(平成28年)12月13日には名護市安部の海岸へ普天間基地所属のMV22オスプレイが墜落し、大破した。また、本年10月11日には、普天間基地所属のCH53E大型輸送ヘリが東村高江の民間地域に不時着し、大破・炎上した。2004年(平成16年)8月13日に発生した、沖縄国際大学へのCH53D大型輸送ヘリの墜落事故もいまだ記憶に新しい中、このように事故が続発する状況が続いている。
 

2 いうまでもなく航空機事故は、発生場所と状況によっては大惨事となり、住民を巻き込み、その財産のみならず身体や生命までをも侵害しかねないものである。そして、短期間に重大な事故が多発している現状に照らせば、米軍の航空機が沖縄県民の生命、身体及び財産にもたらす危険性は、今も現実のものといわなければならない。
 しかしながら、航空機事故が起こっても、米軍は、十分な原因究明や再発防止策を採ることなく、事故発生の数日後には、事故機と同型機の運用を再開させ、日本政府もこれを容認しているのが現状である。その際、日本側は、事故機や事故現場の検証をし、事故原因の究明をすることすらできていない。
すなわち、米軍及び日本政府は、米軍機の事故が相次ぎながらも、何ら抜本的な対策を施していないに等しく、かかる対応は、地域住民の生命や身体を軽視するものであり、到底容認することが出来ない。
 

3 よって、当会は、米軍及びこれを運用する米国政府、並びに抜本的な対策を施さない日本政府に対し、相次ぐ米軍機事故に強く抗議するとともに、徹底した再発防止策の策定及びその速やかな実行を求める。また、日本政府及び米国政府に対して、下記の対策を含むあらゆる実効的な対策を取るように求める。
 すなわち、現在、①我が国の領空を航行する米軍機については、航空特例法により、航空機の安全を確保するための航空法の適用が大幅に除外されており、耐空証明を受けない米軍機の運用、低空飛行訓練、航空法上の飛行場としての要件を満たさない飛行場の運用が可能とされている。また、訓練空域として設定された空域以外の場所においても、米軍は、自由に、演習や訓練(低空飛行訓練含む。)を行っているのが実態である。このような現状は、航空機事故の危険性を大きく増大させるものであるから、特に、航空特例法を改正し、航空機の安全性や飛行高度、飛行場の安全性に関する規制を米軍にも適切に及ぼすとともに、飛行訓練については、許容される範囲や飛行条件等を日米合同委員会で特定・明示することを日米地位協定に盛り込むべきである。
 また、現状においては、米軍機事故が発生した場合でも、②日米間の合意により、米軍の同意なくして、日本側は墜落機に対する捜索、差押えないし検証作業ができないこととされており、日本側による事故の原因究明作業を実効的に行うことが全く出来ていない。しかしながら、これまでの米軍による事故後の対応に鑑みれば、日本の捜査機関により事故の原因が徹底的に解明されるのでなければ、以後の事故を効果的に減少させることは極めて困難といわなければならない。よって、日米地位協定を改正し、日本の警察及び行政が、墜落機への捜索、差押え及び検証作業に関する権限を有することを明記するべきである。
以上のとおり決議する。


2017年(平成29年)12月11日
沖 縄 弁 護 士 会


(提案理由)
1 米軍機事故の多発
 近時、米軍機による事故が頻発している。
 例えば、2015年(平成27年)8月12日、伊計島沖で米陸軍所属のH60ヘリが着艦に失敗し、陸自隊員を含む負傷者を出した。2016年(平成28年)12月13日には、名護市安部の海岸へ普天間基地所属のMV22オスプレイが墜落し、大破した。また、本年10月11日には、普天間基地所属のCH53E大型輸送ヘリが東村高江の民間地域に不時着し、大破・炎上した。
 その他、ここ5年間に限ってみても、以下のとおり、米軍機による事故が頻発している。
2013年(平成25年)
・5月28日  沖縄本島東方約126キロメートルの海上に嘉手納基地所属のF15戦闘が墜落した。
・8月5日   キャンプハンセンに嘉手納基地所属のHH60ヘリが墜落した。
・12月16日  厚木基地所属のMH60ヘリが神奈川県三浦市の埋立地に不時着し、横転した。
2016年(平成28年)
・9月22日  第31海兵遠征部隊のAV8Bハリヤ―攻撃機が、国頭村辺戸岬の東約150キロメートルの海上に墜落した。
・12月7日  岩国基地所属のFA18戦闘攻撃機が、高知市の南約130キロメートルの海上に墜落した。
・12月13日  普天間基地所属のMV22オスプレイが、同基地に胴体着陸した。
2017年(平成29年)
・1月20日  うるま市伊計島の農道に普天間基地所属のAH1Z攻撃ヘリが不時着した。
・6月6日    普天間基地所属のMV22オスプレイが伊江島補助飛行場に緊急着陸した。
・6月10日  普天間基地所属のMV22オスプレイが奄美空港に緊急着陸した。
・8月29日  普天間基地所属のMV22オスプレイが大分空港に緊急着陸した。
・9月29日  普天間基地所属のMV22オスプレイが新石垣空港に緊急着陸した。
・11月22日  米空母艦載機のC2輸送機が、北大東村沖大東島南東約530キロメートルの海上に墜落した。
 また、2004年(平成16年)8月13日に発生した、沖縄国際大学へのCH53D大型輸送ヘリの墜落事故も記憶に新しい。


2 航空機事故の危険性とその放置・容認
いうまでもなく航空機事故は、発生した場所と状況によっては大惨事となり、住民を巻き込み、その財産のみならず身体や生命までをも侵害しかねないものである。そして、短期間に重大な事故が多発している現状に照らせば、米軍の航空機が沖縄県民の生命、身体及び財産にもたらす危険性は、今も現実のものといわなければならない。
 しかしながら、ひとたび航空機事故が起こっても、米軍は、十分な原因究明や再発防止策を採ることなく、事故発生の数日後には、事故機と同型機の運用を再開させ、日本政府もこれを容認しているのが現状である。その際、日本側は、事故機や事故現場の検証をし、事故原因の究明をすることすらできていない。
 例えば、2016年(平成28年)12月13日、普天間基地所属のMV22オスプレイが名護市安部の海岸へ墜落した際には、米軍は「乱気流が原因」と結論付け、事故のわずか6日後にオスプレイの運用を再開させ、日本政府もこれを容認した。そして、墜落機の検証、回収はすべて米軍が行い、日本側は事故機の検証ができていない。
 また、本年10月11日に普天間基地所属のCH53E大型輸送ヘリが東村高江の民間地域に不時着し、大破・炎上した際にも、米軍は事故原因の解明・説明をすることなく、事故のわずか7日後に同型機の運用を再開させた。このときにも、墜落機の検証、回収はすべて米軍が行ったうえ、米軍は放射性物質によって汚染された可能性のある事故現場の土まで持ち去った。他方で、日本側は、事故機の検証ができておらず、米軍により残骸や土が持ち去られた後の現場しか検証することができていない。
 これでは、米軍機の事故が相次ぎながらも、米軍及び日本政府は、米軍機の墜落により住民を巻き込む大惨事になる危険性に対し、何らの原因究明や、これに基づく抜本的な対策をとっていないに等しく、地域住民の生命や身体を軽視していると言わざるを得ないものであって、到底容認することができない。
 

3 求める内容等
(1)よって、当会は、沖縄県民をはじめとする日本住民の生命、身体及び財産が、相次ぐ米軍機事故により脅かされている現状に鑑み、弁護士法1条に基づき、米軍及びこれを運用する米国政府、並びに抜本的な対策を施さない日本政府に対して、相次ぐ米軍機事故に強く抗議するとともに、徹底した再発防止策の策定及びその速やかな実行を求める。そして、日本政府及び米国政府に対して、下記の対策を含む、あらゆる実効的な対策を取るように求める。
(2)すなわち、米軍機については、航空特例法(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定及び日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う航空法の特例に関する法律)により、航空機の安全を確保するための航空法の重要な事項(耐空証明、飛行場・航空保安施設の設置、航空機の運航に関する第6章等)の適用が大幅に除外されている。これにより、米軍において、耐空証明を受けない米軍機の運用、低空飛行訓練、航空法上の飛行場としての要件を満たさない危険な飛行場の運用が可能となっている。また、訓練空域として設定された空域以外の場所においても、米軍は、自由に、演習や訓練(低空飛行訓練含む)を行っているのが実態である。
 このような現状は、航空機事故の危険性を大きく増大させるものであるから、航空特例法を改正して、特に、航空機の安全性や飛行高度、飛行場の安全性に関する規制を米軍機にも適切に及ぼすとともに、飛行訓練については、許容される範囲や飛行条件等を日米合同委員会で特定・明示することを日米地位協定に盛り込むべきである。
(3)また、日米地位協定17条10項(a)及び10項(b)に関する合意議事録では「日本の当局は、通常、合衆国軍隊が使用し、かつ、その権限に基づいて警備している施設若しくは区域内にあるすべての者若しくは財産について、又は所在のいかんを問わず合衆国軍隊の財産について、捜索、差押え又は検証を行う権利を行使しない。ただし、合衆国軍隊の権限のある当局が、日本の当局によるこれらの捜索、差押え又は検証に同意した場合は、この限りでない。」としている。
 これを受けて、刑事裁判管轄権に関する合意事項20では「合衆国軍用機が合衆国軍隊の使用する施設又は区域外にある公有若しくは私有の財産に墜落又は不時着した場合には、適当な合衆国軍隊の代表者は、必要な救助作業又は合衆国財産の保護をなすため事前の承認なくして公有又は私有の財産に立ち入ることが許されるものとする。ただし、当該財産に対し不必要な損害を与えないよう最善の努力が払われなければならない。日本国の公の機関は、合衆国の当局が現場に到着する迄財産の保護及び危険防止のためその権限の範囲内で必要な措置を執る。日米両国の当局は、許可のない者を事故現場の至近に近寄らせないようにするため共同して必要な統制を行うものとする。」とされている。
 このような日米間の合意に基づき、米軍施設・区域外に米軍機が墜落・不時着しても、米軍のみが墜落機を調査して残骸等を持ち去る一方で、日本側は墜落機の調査をすることができず、事故原因の究明ができないのである。
 よって、日米地位協定の改正により、日本国の主権に基づき、日本の捜査当局が事故現場の統制を行い、墜落機・不時着機の残骸、部分品、部品及び残滓物に対する捜索、差押え又は検証を行う権限を有すると明記すべきである。
(4)なお、日本弁護士連合会は、2014年(平成26年)2月20日付で、「日米地位協定に関する意見書」を表明している。本決議案で日米両政府に求める事項は、同意見書の内容に沿うものである。


4 結語
  以上のとおりであるから、本決議案を提案する。
 

 
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