「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に反対する会長声明
投稿日時:【 2014年 10月 28日 】    

 「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に反対する会長声明

1 国際観光産業振興議員連盟(通称「IR議連」)に属する国会議員によって、 「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(以下「カジノ解禁推進法案」という。)が国会に提出され、今国会において審議がなされている。
   このカジノ解禁推進法案は、カジノを含んだ特定複合観光施設区域の整備促進が観光及び地域経済の振興と財政の改善に資する、としてカジノを解禁するという結論の下に政府に対し関係法令の整備を行うことを義務づけるものである。
   しかし、カジノ解禁推進法案には、以下述べるとおり多くの問題があり、当会は同法案を容認することはできない。

 

2 まず、カジノは刑法が禁じている「賭博」の一種である。刑法は、賭博行為が「国民の射幸心を助長し、勤労の美風を害するばかりでなく、副次的な犯罪を誘発し、さらに国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれがある」ことから、賭博行為を刑罰をもって禁じたものである(第186回国会政府委員答弁)。
   カジノを経済の活性化のために解禁することは、まさに国民の射幸心を助長し、勤労の美風を害する危険性があり、刑事罰をもって賭博行為を禁止してきた刑法の立法趣旨に反するものである。

 

3 また、カジノの解禁には、暴力団の新たな資金源確保の機会を与え、マネーロンダリングに利用される危険性や、犯罪の発生、風俗環境の悪化、青少年の健全育成への悪影響、ギャンブル依存症患者の増大等の様々な弊害発生が予想されることは、カジノ解禁推進法も認めている(同法案10条)。これは、刑法が危惧した、賭博が「副次的犯罪を誘発し、さらに国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれ」があるという、禁止の趣旨そのものである。
   ところが、カジノ解禁推進法案はこれらの弊害を予見しながら、その防止及び排除の方法については抽象的に理念を述べるのみで、現実にこれが困難であることを踏まえた具体策を何ら検討していない。例えば、暴力団の介入を参入要件や行為規制などにより完璧に排除できるとするが、既存のギャンブルにおいても長年警察によりその排除が取り組まれながら完璧に暴力団を排除できているとは言い難く、カジノを解禁する中でこれを実現することは更に容易なことではない。
   また、ギャンブル依存症患者に対して同法案は、一定の社会的セーフティネットを構築することをはじめとした対策により対応でき、その費用はカジノの収益で賄えるかのように述べている。しかし、既存のギャンブルにおいても依存症の問題は深刻で、十分な研究や未だ効果的な対処方法がなされていない状況である。にもかかわらず、カジノ解禁で更に依存症の生じる機会を増やしながら、事後的にその収益で対応が容易にできるかのように抽象的に論じることは問題である。
さらに、カジノ解禁は、上記ギャンブル依存症患者の拡大のみならず、その程度に至らずとも、多重債務者を増加させる危険性が高い。多重債務問題は近年まで大きな社会問題であり、弁護士会や各地方自治体での相談のみならず、貸金業法改正、内閣の多重債務者対策本部の設置など、官民一体となった取り組みによってようやく減少に至ったものである。しかし、カジノ推進法案にはこれらの点を十分検討した形跡が見られず、これまでの多重債務者対策に逆行するカジノ解禁により、多重債務問題を再燃させかねない。

 

4  他方で、カジノ推進法案の立法目的である経済効果についても、一定の効果があるとの試算は存在するものの、適正な維持にかかる各種規制コストや、前述の弊害に対する予防及び対処に必要なコスト増加を考えれば、これを上回る効果があるか疑問である。少なくとも、現段階ではこれらの観点から十分な検討されているとはいいがたい経済効果だけでカジノ解禁を安易に認めることはできない。

 

5 なお、最近の報道では、同法案を一部修正してカジノ解禁を当面外国人観光客に限定することにして、上記のような批判をかわして法案の成立を目指そうとしているとのことである。
    しかしながら、「当面」限定ということは将来一般国民にも利用させる可能性を排除していないこと、一旦カジノの大規模な施設を作れば、例えば収益が上がらない場合などには一般国民へも解放されることも容易に想像されることから、外国人への当面の限定とは、カジノ解禁による問題点を一時先送りにするだけのものでしかないことは明らかである。

 

6 以上のとおり、カジノ解禁推進法案は、具体的な対策の十分な検討がないままに、あるいはこれらの問題を先送りにしたまま、カジノの解禁という結論のみを進めようとするものであり、容認できない。従って、当会は本法案に反対し、その廃案を求める。

2014(平成26)年10月28日  
沖縄弁護士会          
会 長  島 袋 秀 勝   

 
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