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民法改正のQ&A
投稿日時:【 2011年 11月 15日 】    

民法改正QA
(記載がない部分については、随時追加いたします。)
 
1 なぜ、いま民法を改正するのですか?どのような内容に改正するのでしょうか?
 
2 今回、改正が検討されているのは、債権法だけですか?総則や物権法も改正されるのですか?
 
3 債権法の改正は、現在どこで検討していて、いつ頃の改正を目指しているのですか?
 
4 債権法の改正の際、参考にしたり、モデルにしたりしている、外国の民法はありますか?どこの国のものですか?
  Q3で説明しましたとおり、現在、法制審議会で債権法改正の議論がなされていますが、特定の国の法律や条約をモデルに改正をするという方針があるわけではありません。
  もっとも、Q9で説明するとおり、法制審議会では毎回膨大な資料が配布されていますが、その資料には、我が国の裁判例、学説だけではなく、外国の民法、民法改正草案や条約、国際的な組織が作成したモデル案なども紹介されています。具体的には、フランス、ドイツ、スイス、オーストリア、オランダ、イタリア、スペイン、ルクセンブルグ、ロシア、カナダのケベック州、アメリカ合衆国、ニューヨーク州、カリファルニア州、イギリス、韓国などの国内法や改正草案、EC指令、EU指令案、国際物品売買契約に関する国際連合条約(ウィーン売買条約)、国際取引における債権譲渡に関する条約、国際動産売買に関する代理に関する条約、国際動産売買における時効に関する条約などの条約、さらにユニドロワ国際商事契約原則、ヨーロッパ契約法原則、ヨーロッパ私法共通参照枠草案などの国際的な組織が作成したモデル案などが紹介され、法制審議会における議論の参考に供されています。
  ちなみに、現在の民法(明治29年法律第87号)は、ドイツ、フランス、スイス、オーストリア、モンテネグロ、スペイン、イギリス、英領インド、カナダのケベック州、アメリカのニューヨーク州、ルイジアナ州、南米諸国などの諸外国の法律を広く参考にする一方で、我が国の実情も調査をして、制定されたものです。現民法の起草者の一人である穂積陳重博士は「日本民法は、比較法学の成果である」と誇らしげに述べていました。明治に制定されて民法は、その後、タイ民法、中華民国民法、韓国民法などにも影響を与えてきました。諸外国の法律等を広く参考にしながら議論をすること自体は、当然のことといえるでしょう。
  なお、法制審議会で議論が開始される前に、複数の学者のグループが民法改正案を公表し、この学者らの提案も法制審議会の参考資料とされていますが、その一つである「債権法改正の基本方針」(民法(債権法)改正検討委員会)に、ウィーン売買条約やユニドロワ国際商事契約原則の影響が大きいと思われる規定があることについて、とりわけ大きな議論を呼んでいます。世界の法制度は、ドイツ法やフランス法などの大陸法と呼ばれる法制度とアメリカ法やイギリス法などの英米法といわれる法制度に大別されますが、日本の民法はドイツ法やフランス法の影響を強く受けたもので、大陸法の系譜に連なります。ウィーン売買条約は、大陸法圏、英米法圏の双方の諸国の法律家が参加した国際連合国際商取引委員会(UNCITRAL)という国際的機関で起草された条約で、200981日に我が国でも発効しています。ユニドロワ国際商事契約原則は、私法統一国際協会(UNIDROIT)という国際的組織が起草した、国際取引の契約法準則です。条約ではなく、法的拘束力はありませんが、国際取引における慣習法ないし条理として機能することが期待されているもので、ウィーン売買条約を補完するもとして参考にされており、仲裁においてはしばしば使われているようです。ウィーン売買条約等については、世界の法律家の英知を結集し、大陸法と英米法を融合し、法制度の違いを超えて共通できるコアな部分をルール化したもので、世界的な標準ルールとなる考え方が示されたものであるとの積極的評価があります。また、取引とこれに伴う法のグローバリゼーションが進む中で、ドイツや中国などは、ウィーン売買条約等の影響を強く受けた民法大改正をし、21世紀の債権法のモデルを標榜しています。その一方で、ウィーン売買条約等に対して、水と油が同居したようなもので理論の体系性がないという批判もあります。大陸法圏の国からすると、英米法の考え方を押し付けるものだという見方もありえます。ウィーン売買条約等の影響を受けて民法を現代化することが国際的な潮流であるとしても、それとは一線を画し、従来の民法との連続性を重視しながら改正草案を検討しているフランスのような国もあります。「債権法改正の基本方針」にウィーン売買条約等の影響がみられることについては、経済のグローバル化が進行するなかで、国際的な立法動向を取り入れ、さらに先駆けて、グローバルスタンダードとなりうるような民法典を制定し、日本から国際社会に発信するものであるとして、積極的に評価をする意見があります。他方で、企業間の国際取引等を念頭においた条約の考え方を日常生活全般について規律する民法の改正に取り込むことへの疑問、現時点で不都合が指摘されていない規定を理論的な観点から改正することへの疑問、大陸法系の現民法に英米法的な考え方(とりわけ契約の厳正な責任)を持ち込むことによる混乱への懸念なども示されています。
  民法は、市民生活、企業間取引、企業と消費者の取引等に関する最も基本的な法律で、その改正の影響は広範にわたることになります。どのような諸外国の制度や条約等を参考にすべきか、国際的な動向に関わりなく我が国独自の制度とすべきかについて、様々な立場から積極的に意見を出しあうことが求められています。
 
5 債権法改正は、破産法との兼ね合いがあると聞きました。どのような点が問題になるのですか?
現在の民法424条1項には「債権者は,債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。」という規定があり,これを一般に詐害行為取消権などと呼んでいます。
他方,破産法160条以下では,破産管財人が,破産者がした一定の行為を否認することができる旨の規定があり,これを否認権といいます。破産手続開始の直前に破産者の財産が流出するなどして債権者間の不公平が生じるのを防止するための規定です。
ところで,民法の詐害行為取消権は,破産法の否認権と似ています。どちらも,債務者(あるいは破産者)の財産の移転させる行為等を否定することにより,債権者の利益を保護する機能をもつからです。
しかし,民法は,明治29年に成立してから抜本的な改正がなく,他方,破産法は,平成16年に全面的に改正されました。その影響もあって,民法の詐害行為取消権と破産法の否認権は,似ている制度なのに,不釣り合いな部分があるのではないかといわれています。
どういうことかというと,民法の詐害行為取消権は,一般に,債務者が無資力であれば,行使できるとされます。他方,破産法の否認権は,債務者が破産者と認められる状態,つまり債務超過であるとか支払不能であるといった場合に生じる権限です。平たく言えば無資力よりも困窮の度合いが大きい場合に生じる権限といえます。債務者が無資力よりも困窮の度合いが大きいならば,より債務者の財産流出行為等を否定して債権者間の公平を図る必要性が高く,この財産流出行為等を否定する権限を広く認めるべきであるという結論になりそうです。しかし,実際には,民法の詐害行為取消権の方が,破産法の否認権より広く認められる場合があるのではないか,といった指摘されているのです(これを「逆転現象」などと呼んでいます。)。
そこで,民法の詐害行為取消権と破産法の否認権とは,不釣り合いがあるといえるのか,もし不釣り合いがあるとすれば,どう整合させるべきか,が論点になっているのです。
 
6 町工場の社長をしています。債権法が改正されたら、どんな影響がありますか?
  今回予定される民法改正は債権法全般にわたるので,取引行為の様々な場面で影響が生じる可能性がありますが,その一例として時効が挙げられます。これまで債権の時効は債権の種類や契約した当事者の属性によって様々で,商人以外の場合であっても,消滅時効期間は1年(旅館の費用など),2年(弁護士報酬など),3年(医師への診療費など),5年(マンション管理費など),10年(売買代金など),20年(定期金など)と多くの種類があったため,時効期間の判断やその管理(時効になる前に請求などの手続等)が複雑・困難でした。
  そのため,ごく一部の例外を除き,消滅時効期間を10年と一律にすることが検討されています。また,消滅時効が一時停止したり,0からのスタートになる事由(時効障害事由)についても,より分かり易い内容にするため,用語や内容の再検討がなされています。
  今後は,社長の債権管理の負担も大幅に軽減される可能性もあります。
  その他の影響や,議論の進行状況については,Q7~Q9に記載がございますので併せてご参照下さい。
 
7 消費生活センターの相談員をしています。債権法が改正されると、相談者へのアドバイスの内容は、どのような点が変わる可能性がありますか?
 
8 銀行に勤めています。債権法の改正は、私たちの業務にも影響がありますか?
 
9 債権法改正について、最新の情報を知るには、どこに問い合わせをすればいいですか?
 債権法改正の最新情報については、法務省ホームページ(法制審議会民法(債権関係)部会)において、随時、審議会の議事録や配付資料等が公開されておりますので、こちらをご参照下さい。